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HOME > 私と日本 > 2010年09月15日号

私と日本〈71〉

溥 冰さん写真

メディアチャイナ株式会社社長
溥 冰さん

 

留学生新聞は「足元を照らす灯台」

 約12万人の在日留学生に根強い人気を誇る『留学生新聞』(1988年創刊、毎月2回発行、中日両言語、発行部数6万3千部)の発行元、メディアチャイナ株式会社の傅冰社長は笑顔の絶えない、物静かではあるが凛とした女性だ。
 傅さんの出身地は広州。1987年、東大で学ぶ先輩のサポートで来日し、日本語やコンピュータ技術を学ぶ。元編集長の誘いで1992年留学生新聞に入社、顧客管理から取材、読者開拓まであらゆる業務を経験した。
 転機は入社からちょうど10年後に訪れる。高い知名度を維持しながらも、赤字続きで経営が立ち行かなくなった新聞事業の再建を託されることになったのだ。「周りからは無謀だと言われた。でも日中4人の仲間の思いは一つだったから迷いは無かった」。2003年、メディアチャイナ株式会社を設立、『留学生新聞』の全事業を引き継ぐ。
 一時は風前の灯火となりかけた新聞の火を、なぜ守り続けようとしたのか。傅さんは「この新聞自体は小さな存在だが、在日中国人にとっては足元を照らす灯台のようなもの。そこには創刊以来、多くの先人達が残してきた日中交流の蓄積がある。何よりも、海外生活を送る留学生たちにつきまとう勉学や生活上の不安を少しでも解消できる情報を提供し続けたかった」と思いの丈を語る。日中交流の草分け的存在でもあった媒体を守ろうとするその思いは結実し、今なお新聞の発行は継続され、留学生の支持も拡大し続けている。
 自らが留学生として来日し、その後も留学生に関わり続けて23年。「第2の故郷」となった日本社会に身を置く傅さんが、今少し気がかりなのは「日本人の美徳だった礼儀正しさや人情味が薄れてきている」のと同様に、中国人留学生の間にも「家庭が裕福で経済的な苦労が少ない学生や、思い通りに行かないとあっさり帰国してしまう人が増えている」ことだという。
 外国を知るための心構えとして「百聞は一見に如かず」という諺がよく引き合いに出されるが、傅さんは日中間で留学や観光など、表面上の相互交流が進めば進むほど、じかに相手国の人と接し、濃密につき合い、お互い理解し合おうとするプロセスが重要になってくると感じている。そしてそのプロセスに、自分自身が参加し続けていこうとする姿勢は、今なお変わることがない。「現在、会社のメンバーは中国人と日本人が半々ずつ。私にとっては日々の触れあいが、新たな日中交流なのです」。(田)

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