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HOME > 日中友好新聞 > 2018年4月15日号
日中友好新聞
中国全人代
国家主席の任期長期化へ
14年ぶり憲法改定
水島斉一
3月5日に開幕した全人代に出席した習近平国家主席(中央)=北京の人民大会堂(写真提供=水島斉一氏)
満票で国家主席に再選された習氏への投票内訳を示すスクリーン=3月17日、北京の人民大会堂
 中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)が3月5日~20日、北京で開かれました。昨年10月の中国共産党大会で党総書記に再任された習近平国家主席の2期目の政権が本格的にスタートした重要な会議です。
「終身制に道」の声も
 今年の全人代で最も注目を集めたのは2期10年の国家主席の任期制限を撤廃した憲法改定です。
 国家主席の任期制限は、毛沢東が発動した「文化大革命」(1966~76年)による社会混乱など個人崇拝への反省を背景に、1人の指導者への過度の権力集中を防ぐ目的で82年の新憲法で規定されました。
 今回の任期制限撤廃で2013年に国家主席に就任した習氏が2期目の任期を終える23年以降も、国家主席に留まることが可能になり、「終身制に道を開く」「時代に逆行している」と懸念の声が上がっています。
内容発表は2週間前
 憲法が改定されるのは2004年以来14年ぶり。しかし、十分な議論が尽くされたとは言えません。国家主席任期制限撤廃など改定内容が明らかになったのは全人代開幕直前の2月25日。それ以降、インターネットに上がった批判の書き込みは次々と削除されていきました。
 全人代が開幕すると、各分科会で憲法改定を歓迎する発言が相次ぎ、11日の採択では賛成2958票、反対2票、棄権3票という改定要件の3分の2を大きく上回る賛成多数で改定されました。内容発表からわずか2週間の改定でした。
 改定された憲法では、昨年の党大会で党規約に盛り込まれた習氏の名前を冠した指導理念「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」や、習氏が提唱する「中華民族の偉大な復興」なども明記。
 第1条には「中国共産党による指導は中国の特色ある社会主義の最も本質的な特色だ」との一文も追加され、党の指導が明確にされました。
汚職摘発機関を新設
 今回の全人代で二つ目の注目点は汚職摘発機関・国家監察委員会の新設です。
 習政権は12年11月の党大会で発足して以来、反腐敗闘争を強力に推進。しかし、反腐敗闘争を主導してきた党規律検査委員会の取り締まりの対象は党員でした。その他、国務院の中に監察省、検察院の中にも別の汚職摘発組織があり、力が分散するなど問題もありました。
 国家監察委では対象を、すべての公務員、国有企業、教育、医療、スポーツ機関の管理職などあらゆる公職者に拡大。監察省などは国家監察委に統合されます。
 国家監察委は改定された憲法にも明記され、国務院(中央政府)や最高人民法院、最高人民検察院などと同格に位置付けられ、独立性の高い機関となります。
 全人代では国家監察委の法的根拠となる監察法も成立。対象者を特定の場所で取り調べる留置(最大6カ月)など強い捜査権限が与えられました。
 国家監察委トップの初代主任に決まった楊暁渡(よう ぎょう と)氏は党規律検査委の副書記も務めており、国家監察委は事実上、党の指導下に置かれることになります。
生態環境省の設置も
 このほか全人代では、金融・保険機関の監督部門の統合や環境問題に対応する生態環境省の新設など国務院機構改革も決まりました。  国家主席には習氏が満票で再選。李克強(り こく きょう)氏も首相(国務院総理)に再任されました。
 昨年の党大会で年齢制限により党政治局常務委員と中央委員を引退し、処遇が注目されていた王岐山(おう き ざん)・前党規律検査委書記は国家副主席に選出されました。 (ジャーナリスト、北京在住)