私と日本〈97〉
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福州大学外国語学院日語系主任
潘 秀蓉副教授
日本文化の素晴らしさ伝えたい
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肩書きとは打って変わって、優しい表情、控えめな日本人女性かとも思える、配慮の行き届いた人。小柄の中に大胆かつ一本の直線のような知性と情熱が感じられる。
公務員生活に飽き足らず1995年に沖縄へ。日本語を学び東京外国語大学の修士、博士課程へと進む。11年もの日本留学で学んだことすべてが、今につながっている。
日本文化にすっかり魅了される。映画、能狂言の鑑賞はもちろんのこと、生け花、茶道、陶芸、ピアノ、菓子作りなどに、授業とバイトの合間を縫って通った。何と言っても圧巻は、7年間もかけた日本人形作りで、腕前は師匠級とも。今、自宅を飾っている。全く日本人顔負けである。
帰国後は創設間もない日語学科のために、文化行事、日本人の招聘・交流に忙しい。学生たちには日本と中国それぞれの文化的価値を伝え、考えさせようとしている。
「個人の力は小さいが、日本文化の素晴らしさを伝えることが、留学生としての自分の役目だと思う。―――中国がよくなるために」「中国と日本、その両方の国の素晴らしいところを見て、互いに学ぶことが必要だと思う」
学生時代に学んだのは中国古典文学。中国文化への愛着と中国人としての自負が垣間見える。
中国で出版されたばかりの『周作人と日本古典文学』(厦門大学出版社)は博士論文にもとづいたもの。周作人は魯迅の弟。戦争中の日本への協力で、中国での評価は低いが、日本文化を最もよく理解していた知日派だと思っている。
甘いものと旅行が大好き。お抹茶と地元福建の武夷山の岩茶を味わうのが至福の時。貴重な存在である。
(井手淑子)