私と中国〈972〉
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慶応大学名誉教授
岩松 研吉郎さん
温かい目で中国を観察 |
日本語・日本文学が専門。
この4年、福州大学の客員教授として外国語学院日本語学科で、川柳・俳句・短歌や年中行事などを題材に中国人学生と教員を相手にされている。
宗教や植物、お寺などの建造物についても造詣が深く、その観察は周囲の中国人や日本人をしばしば驚かす。
さすがは、200万部を超えるベストセラー『磯野家の謎』を出版した「東京サザエさん学会」の会長である。
福州市の別名は、榕城、ガジュマルは各所にある。
氏は最近15㌻にわたる長文の感想を「榕城家常雑記㈠」と題して、共著『水曜日 東アジア 日本(1号)』(風響社刊、800円)に発表された。
この雑誌の帯には「元慶応大学教授らの『老いのたわごと』…、今日の東アジアとその中の日本にかかわる意見・異見、卓見・短見を世間におしつけ・ひろめようということにした…」とある。氏たちのスタンスがよく示されている。
好奇心旺盛で、毎年4~5カ月の福州滞在時には、福建省内外の探訪に出かけられ見聞を深められている。
氏の中国に対する関心の原点は、37~42年に軍医として華中、満洲に赴任した実父、新中国へのシンパシーのようで、現代中国を見る目には温かいものがある。
中国滞在の感想は、「人びとが穏やかで丁寧で、親切でした」、「榕樹をはじめ緑に満ちた環境の良さ、薄味で魚介の豊かな食物、過ごしやすいところです」に集約される。
(井手啓二)