私と中国〈959〉
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日本人残留孤児
王 林起さん
中国で一生を |
この人の名前を覚えている人も多いのではないだろうか?2015年9月4日、NHKニュース「おはよう日本」で放映され知られるようになった残留日本人孤児・王林起(日本名=渡部宏一)さん(81歳)のことだ。
この4月、ハルビンで行われた「中国養父母に感謝するつどい」に北京から夫妻で合流、日本の代表団と行動をともにし交流した。完全に忘れていたという日本語がすばらしく流暢で、みんなを驚かせた。
1941年、山形県東置賜(おきたま)郡和田村から中国黒龍江省林口(りんこう)県に開拓団として両親とともに渡った。5歳だった。
逃避行のなかで一人ぼっちになって「飢えと病気で虫の息」だった彼を中国の養父母(王殿臣(おうでんしん)・賈風朝(かふうちょう)さん夫妻が救った。養父母は彼を慈しみ、長男として成長させた。
ハルビンの集会で養父が最後に残した言葉を涙ぐみながら紹介、「貧乏のためにお前を大学まで出せなかったことは悔いが残る」
その後の75年間、帰国せず中国に住み続ける道を選んできた。北京のタービン工場で研削盤操作の優秀な労働者として仲間から厚い信頼を得、定年まで勤め上げた。
ハルビンに同行した夫人は、すらっとしたセンスのよい女性だが、養母の娘さんである。
王林起さんは近年、75年を振り返り、自伝『我的在中国75年二戦日本遺孤自述』を著した。その著作の中でも特に一章を設け、「我的老伴」として奥様のことに触れている。著作は中国と養父母、妻、家族に対する感謝にあふれている。9月に訪日の予定という。
(北中)
『我的在中国75年二戦日本遺孤自述』