私と中国〈929〉
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フリーランスライター
室田 元美さん
無名の人たちの見た歴史 掘り下げたい
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「最初は夢を売る仕事をしたくてコピーライターになったのがきっかけ。20代はミーハーでした」と笑う。
出版社で女性誌のライターとして活躍。丸木位里、丸木俊、住井すゑ、鶴見和子各氏らへのインタビューで、社会問題や平和に目が開かれるようになった。
東アジアには特別な思いが。「祖父が戦時中、旧満州の税関に勤め、後にシベリア抑留へ。父が15歳で家族を連れて苦労して引き揚げて来た歴史も影響したのでしょうか」。
取材先は北海道から九州までの炭鉱や飛行場、ダム、地下工場、港など50カ所以上。訪中したとき、中国遼寧省北部の平頂山事件の跡地では「子どもを抱いている親らしき遺骨や苦痛のあまり大きく開かれた口にショックを受け、想像しきれない現実がそこにある」と確信した。
秋田県の花岡炭鉱を訪ねたときも厳冬の中で中国の人たちの強制労働の苦痛を少しでも想像できないかと取材時期を真冬に選んだ。
「もっと知りたいという気持ちが取材にかりたてる。歴史をつくるのは無名の人間ひとりひとり。その人たちの目から見た歴史を掘り下げていきたい」。
「蒙古踊り」(1面参照)のメンバーでもある。「謝罪と赦しによって国を越えて人びとの心を結んだ撫順戦犯管理所の存在に希望を感じた。この踊りを大切に、若い人に伝えていければ」。「東アジアの平和と交流は私自身の願い。テーマにすえて書き続けたい」と意気込みを語る。
2010年8月に『ルポ 悼みの列島 あの日、日本のどこかで』を上梓、同年11月に平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞を受賞。その他の著書に、『いま、話したいこと 東アジアの若者たちの歴史対話と交流』『1945←2015若者から若者への手紙』(共著)などがある。兵庫県神戸市出身、60年生まれ。東京都在住。(押)