私と中国〈925〉
「勲章の川」公演に向け意気込みを語る 浩二役の冨永さん(左)とショウベ役の榎本さん |
浩二役
冨永隆徳さん
ショウベ役
榎本邦尚さん
東京芸術座 「花岡事件」を再演へ
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1月28日から、東京芸術座が東京・俳優座劇場で「勲章の川―花岡事件」を15年ぶりに再演する。物語は1970年代の秋田県大館市花岡周辺が舞台。ある高校教師が社会の授業で1945年6月30日に起こった花岡事件を取り上げたことがきっかけで、事件のことを忘れたい大人たちと、そんな大人たちを追及したい若者たちのバトルが始まる。
若手出演者の榎本邦尚さんと冨永隆徳さんがインタビューに応じてくれた。主人公の友人で、花岡事件を取り上げた教師に「先生は無罪だから事件のことをしゃべるのか」と詰めよるショウベを演じる榎本さんは、入団11年目の32歳。劇団内の憲法九条の会で花岡事件を学ぶ機会があり、そこで初めて知ったが取り立てて意識もしていなかった。
いよいよ稽古が始まり、真剣な表情で取り組む 団員たち(東京芸術座の稽古場)
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「勲章の川」を演じることになり、初演時の資料を読むなどして、事件を改めて勉強。「『勲章の川』は劇団にとって大切な演目」という榎本さん。作品を若い自分たちのものにして次へ伝えていきたいと張り切る。
一方、ギターや恰好いいものに目がない主人公・浩二を演じる冨永さんは入団5年目。もともと近代史にはあまり興味がなく、この作品に巡りあうまで全く事件のことを知らなかった。
「理解が追いつかない」と思った冨永さんは、実際に現地へ行き、ひっそりと建つ供養塔に花束や線香が供えてあった光景を見て、この事件がまだ終わっていないことを感じたという。
浩二は両親が花岡事件で中国人殺害に関係したという役柄。本格的な稽古が始まるまでに、花岡事件の背景や当時の日中、日韓の関係もきちんと認識してドラマを作っていきたいと考えている。
日本と中国に関しては、「お互いよく知ることが大切」と口をそろえて言う二人。なかでも長崎・佐世保出身の冨永さんはアメリカ人居住者が身近にいた経験を踏まえ、相手のことを理解し受け入れなかったから花岡事件のような事件が起きたのではないかとも。 「年末は帰省せずに台本を読み直します」と、年をまたいでの稽古に意気込みを見せた。
(滝沢)
東京芸術座って?
東京芸術座は村山知義の演劇活動に端を発し、心座、左翼劇場、新協劇団、そして戦後の第二次新協劇団を経て1959年結成された劇団。一貫してリアリズム演劇の創造と普及の運動を続け、年2~3回の本公演とアトリエ公演のほか、学校公演や地方公演など年間200回にのぼる公演を行なっている。
これまでの主な演目は「蟹工船」「12人の怒れる男たち」など。
「勲章の川―花岡事件」は、劇団創立100回目の記念公演。
公演日=1月28日(木)~31日(日)場所=俳優座劇場(東京・六本木)チケットは協会東京都連合会でも取り扱います。(電話03〔3261〕0433)