私と中国〈865〉
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映画監督
池谷 薫さん
人間の生きざま撮りたい |
ロングランヒットとなった前作「蟻の兵隊」から7年。池谷さんの最新作「先祖になる」が東京・渋谷の[シアター]イメージフォーラムで公開中です。
学生時代は「ドキュメンタリーよりも、むしろ劇映画に興味があった」といいます。ニュース番組の取材で直接、人と会って話を聞くことの面白さ、劇映画のシナリオを超えるドキュメンタリーの世界にのめり込んでいきました。
中国との出会いは1989年の「天安門事件」。「あの日、解放軍の戦車の前に立ちふさがった男に勇気ある人間だと感動したんです。その一方で、その場にいない自分を恥じ、そして悔いました。現場にいないということは、何も見てない。語れないのと同じ」と、手厳しい。
「僕はすぐに惚れちゃう。『あなたに惚れました。あなたの生きざまを映像に撮らせてください』と、正直に言います。相手もびっくりしますが、応えてくれる。そして『自分の映画』という意識をもって、撮影に挑んでくれる。撮る側と撮られる側は一種の『共犯関係』」と、歴代の主人公たちを思い浮かべ嬉しそうに笑います。
「ドキュメンタリーとは人間を撮ること」が信条。
「『蟻の兵隊』の主人公・奥村和一さんが亡くなる直前に、『陸前高田はどうですか』と気遣ってくれたんです。奥村さんから今回の映画で主人公となる佐藤直志さんに引き継がれた縁を感じます」
「映画を作るだけでは意味がない。多くの人に観てもらうことで、初めてそこに命が宿る」と、語ります。1958年、東京生まれ。(押)