私と中国〈817〉
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ノンフィクション作家
平松 伴子さん
歴史の事実を認めつき合う |
「いちばん貴重な写真は、表紙の写真です」。
平松さんの自著『2人のドン・キホーテと仲間たち』は、内モンゴルのホルチン沙漠の緑化運動に取り組んできた岩手県出身の菊地兄弟のことを書いた本。緑化が進み、現地には表紙のような沙漠はもうありません。
40歳から川越ペンクラブ季刊誌『武蔵野ペン』を28年間編集。その仕事を通じ、菊地兄弟の弟・實さん(故人)と出会い、緑化運動に加わりました。
「女性のことは、女性が書く」。女性の業績を書き残すことをテーマにしています。『2人のドン・キホーテ』では、日本人残留孤児で元中国人民政治協商会議全国委員の烏雲(ウ・ユン)さん(女性)が登場します。ホルチン沙漠の緑化で重要な役割を果たしているだけでなく、なぜ日本人が緑化するのか、その理由を満蒙開拓団までさかのぼると、烏雲さんはキーパーソンだからです。
満蒙開拓団に土地を奪われた現地の人びとは、本来農業や牧畜に向かない土地で生活を営むしかありませんでした。それが沙漠化を生む原因になりました。
鑑真和尚が大好きで、2003年、前進座「天平の甍」を揚州へ見に行ったとき、中国人歴史学者の「互利互恵」という言葉が心に残りました。尖閣諸島の問題でも、この言葉が解決に結びつくと考えています。日中交流について、「歴史の事実を認め、つき合う」ことが重要と言います。
昨年末、ベトナム元副大統領のビン女史を書いた本、『世界を動かした女性グエン・ティ・ビン』を出版。ビン女史との3度のインタビューと経歴が書かれています。
敗戦前後、「まずい外米」と言って日本人が食べた米は、日本軍がベトナムから奪ったもので、そのため現地では200万人が餓死しました。
今年の夏には「枯葉剤被害者支援・グエン・ティ・ビン女史と語るベトナムの旅」を企画しています。(東野)