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HOME > 私と中国 > 2010年06月5日号

私と中国〈802〉

中井 昭彦さん写真

元滋賀県農業試験場勤務
中井 昭彦さん

 

魯迅に魅せられて

 まだ少年だった1943年頃、文学の名作や少年向きの本をたくさん借りたなかに魯迅の「故郷」があった。
 当時は魯迅の名も知らなかったが、小説の末尾に「もともと地上には、道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ」との語句が後々まで心に残った。戦後、岩波の魯迅選集を読んで、この小説「故郷」が魯迅の作品であることを知った。
 元来読書好きで、中国の伝記物、三国志、水滸伝、西遊記、紅楼夢などほとんど読み尽くしていたが、現代小説は、謝冰心の短編ぐらいしか読んでいなかったので、魯迅選集は読み応えがあった。藤野先生、孔乙己など、いずれも心に沁みたが「特に『阿Q正伝』が強烈だった」という。
 魯迅に魅せられ、2007年に杭州・紹興に行ったとき、魯迅の生家を訪ね感激した。孔乙己にならって茴香豆で紹興酒を一杯やり、「紹興に来たのだ」と実感した。
 「阿Q正伝」を後で読み直してみて、「戦後の日本を皮肉っているようにも読めた。日本は一等国になったつもりのようだが、一皮めくればアメリカの属国、とても独立国とは言い難い。まさに阿Qじゃないか」とズバリ指摘した。(市)

 

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