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私と中国〈795〉

長安 伊知子さん写真

中国「残留日本人」孤児
長安 伊知子さん

 

『雨桜』を自費出版

 中国「残留日本人」孤児は、「満蒙開拓団」関係者だけではない。さまざまな事情で「孤児」になった人も少なくない。
 伊知子さんは、3歳で「満州鉄道」の仕事についた父母と中国に渡り、5歳の時山東省で両親と生き別れ、路頭をさまよっているなかを養父母にひろわれた。父は行方不明、母は働きに出たまま帰ってこなかった。
 46歳で亡くなった養父はいい人だった。しかし79歳まで生きた養母の性格もあり、辛い日々だった。
 「文革」では、日本人だといじめられ「潜伏特務」などの言葉を浴びせられた。
 1985年、肉親捜しで來日した後、父と同僚だった男性から、劉俊英さん(伊知子さんの中国名)あての手紙が来て、父母は米子市(鳥取県)の出身であることが分かった。
 『雨桜』は、自分の数奇な運命を「なんとか記録に残したい」との思いに駆られ、中国にいた1983年から3年かけて完成した。
 1986年に、夫(朱宗仁氏・済南市)、3人の子どもと帰国。訴訟原告団に加わり、「新支援策」に伴う「年金還元」を資金に2008年8月、1000冊を自費出版した。358ページに及ぶ長編。
 表題「雨桜」は、祖国日本の桜にやさしく降る雨を見ながらつけたもの。中国の読者と学校に寄贈した。
 これを読んだ「孤児」からは、「孤児の痛烈な生涯を代表してくれた本」との感想も寄せられた。
 いまの願いは「日本語の本にし、多くの日本人に読んでもらいたい」ということ。翻訳ボランテア・協力者の出現を心待ちにしている。(お)

 

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