私と中国〈787〉
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中国語講師で活動する
伊藤 海桜さん
中国語習得の基本は「聴・ting」 |
1986年、先に帰国していた日本人の母を頼って家族とともに来日した。日本語はまったく話せなかったが、13年働き話せるようになった。いまでは、協会神奈川県央支部・湘南支部で4教室の講師として活躍している。海桜さんは、中国語習得は「聴・ting」が基本だという。「中国語の美しさ、面白さ、中国人の心の豊かさを理解する力をもつこと、そして気持ちの変化の瞬間に、言葉も音調も微妙に変化していく表現方法など、習う人の心に中国語に対する火を点(とも)してあげるよう努力してきた。
例えば、四字熟語。「因人而異」(人によって異なる)「因人制宣」(相手に応じて適切な措置をとる)のように、「一文字の違いを聴き取ることで意味の大きな違いが生じます」と話す。
さらに「中国語に接したら素早く日本語に置き換える反応力や直観力を習慣化するまで高めることが大切で、中高年でも訓練は可能。その聴力の反応環境を精一杯つくってあげました」と「聴」の重要性を強調する。授業の熱心さは折り紙つき。休憩時間を忘れることも度々で、生徒に熱血教師と呼ばれる。
父は中国国民党の元軍人。その父は、反革政治犯として「文革」期に大きな迫害を受けた。日本人への迫害を懸念した母は「日本語」をまったく教えてくれなかった。
無類の「本好き」。小学生の頃から唯一の友は本だった。知識も豊富。いまの中国についても「経済の発展と合わせ、環境や民主主義の改善が大きな問題」と厳しい表情で話してくれた。(お)