日中友好新聞
9条改憲を許すな
冷静に判断し平和の道見定めよう
黒澤いつき
小谷成美弁護士(奥)が大阪で講師を務めた憲法カフェ(「あすわか」写真提供)
日本中国友好協会は、今年の第66回大会決定で、「日本の侵略戦争の実態と、日本国民にもたらした大きな苦しみをリアルに語っていくことは、改憲を許さない大きな力となる」と述べ、「市民、団体、野党などと手を握って、平和主義、立憲主義、民主主義を守るために力を尽くしましょう」と訴え、「平和憲法を生かし、改悪から守りぬく」活動に取り組んでいます。
「明日の自由を守る若手弁護士の会」共同代表の黒澤いつきさんに、安倍首相の唱える改憲のねらいや問題点などについて解説していただきました。
(編集部)
「明日の自由を守る若手弁護士の会」(略称「あすわか」)は、2013年1月に28人の若手弁護士らで結成された法律家団体です。2012年4月に発表された自民党の改憲草案に反対する、という一点で結集している、いわゆる護憲団体とはちょっと違うユニークな団体です。
明治憲法と同じ価値観
近代の民主主義国家は、憲法で権力を縛ることで国民の自由・人権を守るという立憲主義のシステムを土台にしています。ポツダム宣言を受諾した日本も、日本国憲法の制定により頑丈な「立憲主義」の土台を敷きました。あらゆる政治権力は、憲法を擁護し、尊重する義務を負います(99条)。
ところが自民党の改憲草案は、例えば「公益」や「公の秩序」を理由に国民の人権は制約できると規定し、戦前の「大日本帝国憲法」と変わらない価値観を土台にしています。社会の基礎的な単位は「家族」だとして、個々人の尊厳よりも「家」の維持・繁栄を優先させる姿勢は、家制度とまるで変わりません。
そして、9条2項(戦力不保持)の全面削除と集団的自衛権の行使、国防軍創設、戦争・内乱・大災害時における緊急事態宣言の発令によって憲法秩序を一時停止させ、政治権力を内閣に集中させるという規定は、まさに戒厳令で、独裁を可能にする憲法の自爆装置です。
この改憲草案は、立憲主義をないがしろにして、権力をしばる役割を果たしておらず、近代における「憲法」ではないのです。
全国で憲法学ぶ活動
憲法へのスタンスはいろいろありますが、「こんな改憲だけは絶対に反対」という一点で手を結んだ「あすわか」は、現在570人の会員に恵まれ、それぞれが自分の地元で活躍しています。特に力を入れているのが、〝知憲〟を理念とする憲法カフェです。
憲法の議論が盛り上がらないのは、そもそも圧倒的多数の国民が憲法を知らないからです。護憲か改憲か、という土俵に乗れずに、自分とは関係ないものとして憲法を遠ざけてしまえば、政治も憲法も他人事の「おまかせ民主主義」が深化してしまいます。
私たちは、国民一人ひとりが憲法を自分の人生に関わる問題として向き合って、自分なりの答えを考えてもらいたい、という思いで「とりあえず憲法を知ってみよう」と呼びかけてきました。喫茶店やレストランで気軽に弁護士から憲法の話を聞ける「憲法カフェ」は子育て世代を中心に大好評で、全国からの依頼が絶えません。
国防軍の創設ねらう
今年5月、安倍首相は「自衛隊を憲法に明記する」として9条2項を残し、自衛隊の規定を書き加える案を出し、憲法改正の発議へ前のめりのスケジュールを立てています。
違憲の集団的自衛権を行使できる自衛隊は、専守防衛に徹し災害救助でも活動する自衛隊とは全く別物です。今その自衛隊を憲法に明記することは、必然的に9条2項を死文化させることになります。あまりにも姑息なやり方で、到底認めることはできません。
核開発を止めない北朝鮮への対応に、「対話は無駄骨」と公言してひたすら制裁の強化を訴える安倍首相に、憲法9条への理解はなく、この国の舵取りをする資格はありません。自衛隊を明記した後には当然、改憲草案どおりの国防軍創設を狙うでしょう。
加害と侵略の歴史の果てにたどり着いた、戦争放棄・戦力不保持という尊い決意は、「理想論」どころか、グローバリズムが深化した現代の国際社会においては最も現実的な唯一の選択肢です。
歴史や憲法の正確な知識があれば、北朝鮮への敵意や不安を過剰にあおる報道に流されずに、冷静に改憲議論を見つめることができるはずです。時代錯誤な改憲を食い止め、日本のデモクラシーがより豊かなものになるよう、奮闘しましょう。