日中友好新聞
絵はがきに見る日中関係史
「今こそ活用を」と強い訴え
米人収集家が展示資料を提供
「(支那事変)上海 防毒マスクをつけて活動する日本兵」(出典=ラップナウコレクション)
ラップナウ氏が協会へ
世界的な、アメリカ人絵はがきコレクターのドナルド・ラップナウ氏(75歳)と夫人の道子さんが4月20日、日中友好協会本部を訪問しました。
日中友好協会が取り組む「不再戦平和活動」の趣旨に賛同、日清戦争から第二次世界大戦終結までの日本と中国の歴史を刻む貴重な絵はがきなどのコレクションのデータを提供していただくことになりました。
コレクション収集にかける思い、日本人の歴史認識、日中友好についてお話を伺いました。
日本とのかかわり
日本に興味を抱くようになったのは、1960~70年代のベトナム戦争中に薬剤師として東京郊外の米軍基地の病院で働くことになったため。そのころ、慶応病院で薬剤師をしていた妻の道子さんと出会い結婚。現在はアメリカのニュージャーシー州に住みながら、年に2カ月、京都に滞在しています。
絵はがきだけで4.8万枚
30代後半から、日本やアメリカで、日本と中国の伝統的な骨董品を集め始め、その後は紙製品を専門に集めるように。欧米諸国の日本進出の時期から第二次世界大戦終結までの期間を中心に収集し、絵はがきのコレクションだけでも約4万8000点になります。
そのほか日本、中国、韓国に関する古い書籍や、明治期の木版画、古写真、地図、双六、カルタ、掛け軸、伝単(戦争相手国の民間人、兵士の継戦意欲を失わせるため、また投降を促すために配布されたビラ)、チューインガムの付録カード、マッチのラベルなど多岐にわたります。
ラップナウ氏は「絵はがきに描かれている時代・文化・社会の特徴に興味があります。外国人の立場から特に日本の対外関係に注目します」と語ります。
「戦時中はどの国もプロパガンダを多用します。こうした歴史を日本、中国、アメリカなどの資料によって国際的視点で回顧し、当時の日中関係に焦点を当てるとともに列強国が日本をどう見ていたか理解したいと考えました」。
1938年に発行、チューインガムの付録として南京の戦闘の様子を伝えるガムカード
(写真出典=ラップナウコレクション)
昨年、日本初公開
京都・立命館大学国際平和ミュージアムで昨年10月末から12月中旬にかけて「絵はがきにみる日本と中国1894―1945」を開催。
コレクションの中からヨーロッパで発行された風刺画、ステレオカード(左右2枚の写真を組み合わせて3Dのように見せるカード)、南京入城などの写真付きのもの、戦闘機などの図柄をあしらった着物や、チューインガムの付録カード(日中戦争中の旧日本軍の蛮行を描写)など415点を展示し、そのすべてが日本初公開のものばかりで注目されました。
参観した若い人たちからは「全然知らなかった」、高齢者からも「今まで、こういったコレクションを見たことがない。もっと見せてほしい」などの声が多数寄せられたそうです。
この展示会を契機に日本の大学や外国からも展示の問い合わせが来るようになりましたが、ラップナウ夫妻から「今こそ、活用してほしい。日中友好協会での全国展示を優先したい」との嬉しい申し出があり、今回のコレクション・データ提供が実現しました。
右からラップナウ氏、道子氏と矢崎本部事務局長
展示で伝えたいこと
ラップナウ氏は「展示を通して過去の日中関係の困難な時期を視覚的に紡ぎ合わせてみること、日本と中国の相互理解と友好関係の促進の一助になることを願っています」。
そのうえで、「とくに高校生や中学生に見てほしいですね。若い人たちが日本の歴史を知らないのは残念。日本の歴史教科書はアジアにおける日本の近代戦争については十分とはいえません」と、協会の展示普及に期待を寄せます。
矢崎光晴本部事務局長は「今後、これらのデータを最大限に活用し、全国組織での巡回展の開催をめざしたい」と、夫妻の思いを受け止め、さらに「村瀬守保写真パネルといっしょに展示すると、さらに理解が深まるのではないか」と意欲的に語りました。
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