日中友好新聞
中国全人代
秋の党大会に向け経済・社会の安定を強調
藤本 隆
政治活動報告を行なう李克強首相=3月5日、北京の人民大会堂(写真提供=藤本隆氏)
中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)が3月5日~15日、北京で開かれました。今年は、5年に1度の中国共産党大会が開かれる特別な年。
全人代は、習近平指導部体制の2期目に向け、「習近平同志を核心とする党中央への強い団結」を繰り返し呼びかけ、経済と社会の安定を強調しました。
5日の開幕式で、政府活動報告を読み上げた李克強首相は「人民が依然として不満を抱えている問題は少なくない」と指摘。「人民が関心を寄せている際立った問題の解決に力を入れる」と訴えました。
失業・貧困解消に全力
中国政府が力を入れている問題の第1は、経済と雇用です。昨年の中国の経済成長率は6.7%増でしたが、今年の目標は6.5%前後増とさらに引き下げました。中国は、経済の安定成長を目指す「新常態(ニューノーマル)」を掲げ、経済の構造改革を推進。その過程で、石炭や鉄鋼業の過剰生産の解消を進め、それに伴う大量の失業が問題になっています。
李首相は、今年は雇用問題の厳しさが増すと認め、昨年から100万人増の1100万人の新規雇用を生み出すと表明。15日の記者会見では、「われわれは雇用を増やす能力があり、大規模な集団失業は起こらない。たとえ一時的に失業しても、政府が責任を持って生活を保障する」と訴えました。
第2は、貧困との闘い。中国政府は、2020年までに農村貧困人口ゼロを目標に掲げ、昨年は1240万人の貧困人口を減らし、残りは4335万人。今年は貧困対策基金を昨年比3割増の861億元(約1兆4000億円)計上、1000万人以上の貧困人口削減をめざします。
李首相は「脱貧困の成果が人民に認められ、歴史の検証に耐えうるようにする」と決意を述べました。
環境・反腐敗で対策
第3は、環境問題。とくに深刻な大気汚染では、▽電気・ガスによる代替などで、石炭燃焼による汚染を解決▽再生可能エネルギーの発展▽重点工業汚染源の24時間オンライン監視▽自動車排ガス対策の強化▽汚染物質の違法排出を厳しく取り締まる―など具体策を提示。李首相は「青空を守る闘いに断固勝利する」と強い姿勢を見せました。
第4は、反腐敗闘争。2012年11月の党大会以降、約200人の高官を腐敗問題で摘発。昨年、汚職で摘発された公務員の数は、前年比12・2%減の4万7650人、閣僚・省長級以上の高官は21人で、前年の41人からほぼ半減しました。空前の反腐敗闘争で、すでに「腐敗したくない」状況に達したとされています。
反腐敗を継続し、いま是正をめざしているのが、公務員の職務怠慢です。脱貧困や経済成長の成績で、地方政府のデータ改ざんが問題になりました。李首相は、職務怠慢も腐敗と位置づけ、「監督を厳しくし、消極的な仕事ぶりを厳しく正す」と強調。政府は、公務員の不正を取り締まる「国家監察委員会」設立を準備しています。
第5は、国家分裂に対する厳しい姿勢。李首相は、暴力テロ活動を強く批判。また、「香港独立に前途はない」と、香港で高まる「独立意識」に警戒感を示しました。台湾についても、「いかなる方式や名義でも、台湾を祖国から分裂させる者は許さない」と強調しました。
政治活動報告を聞く全人代代表=3月5日、北京の人民大会堂(写真提供=藤本隆氏)
平和と友好、日本人民に期待
王毅外相は3月8日の会見で、「今年は日中国交正常化45周年と同時に、盧溝橋事件から80年だ」と指摘。日本国内は、「平和と友好」「戦争と対抗」という二つの道の間をいまだに揺れ動いており、「歴史を後退させようと企てる者もいる」と、安倍首相らの歴史認識を暗に批判しました。
一方で、王外相は「平和を愛するすべての日本人民が、この重要な年に、国家の進む方向をしっかりと握ってくれることを望んでいる」と強調しました。
(ジャーナリスト・北京在住)