日中友好新聞
「鬼から人へ」の史実を検証
瀋陽 日本人戦犯釈放60周年シンポ
8月28日、中国瀋陽で行われた中国友誼促進会主催、撫順戦犯管理所旧址陳列館共催の
「歴史の証明―日本戦犯釈放60周年記念シンポジウム」(写真はすべて荒川美智代氏撮影)
日本の敗戦後、撫順戦犯管理所での中国側の人道的な寛大政策によって、侵略戦争下での自らの加害行為を反省した日本人戦犯は帰国後、中国帰還者連絡会(中帰連)を結成し、自らの加害証言を通して反戦平和の思いを語り伝えてきました。
この約1000人の日本人戦犯が、1956年釈放され、帰国を果たしてから今年は60周年の節目に当たります。
これを記念して、中国友誼促進会主催、撫順戦犯管理所旧址陳列館共催の「歴史の証明―日本戦犯釈放60周年記念シンポジウム」が8月28日に中国・瀋陽で行われ、日本中国友好協会から田中義教理事長と矢崎光晴事務局長が出席しました。
日中36人が参加・討論
中国友誼促進会の馬燦栄(さんえい)理事(元駐独大使)、近藤昭一衆議院議員、浜田和幸元参議院議員のあいさつで始まったシンポジウムには姫田光義中央大学名誉教授、高洪中国社会科学院日本研究所所長はじめ日中両国の学者・研究者や、伊東秀子さんら元戦犯を父にもつ2世など36人が出席し、「日本戦犯に対する中国の政策の実施およびその意義」と「歴史を鑑とし、未来に向かい、世々代々の中日友好を推進するプラス・エネルギーを結集しよう」の2つのテーマをめぐって発言と討論が行われました。
参加者の発言に先立ち、元戦犯の高橋哲郎さん(元中帰連事務局長)のビデオレターが披露されました。発言者は日中双方合わせて18人(発言者とテーマの紹介は3面に掲載)。
田中、矢崎両氏が発言
発言・報告する田中義教協会理事長(前列中央)
協会の田中理事長は「『撫順の奇蹟』日中友好運動における今日的意義について」と題し、日本の戦争被害と比べて侵略戦争の加害の事実や撫順戦犯管理所での体験が日本国内で知られていない実態を指摘するとともに、中帰連とともに日中友好協会がこの撫順の体験を語り広げてきたこと、そしていま、これをテーマにした合唱「再生の大地」の歌声を通して、撫順の物語が多くの日本の人びとの間に広げられていることを報告。
さらに、領土問題をめぐる日中両国の対立を話し合いで解決していく必要性や、「戦争法」施行の下で再び戦争の過ちを繰り返させない日中友好運動の役割の大きさを強調しました。
元戦犯・矢崎新二さんを父にもつ矢崎事務局長は「中帰連2世として考える反戦平和と日中友好」と題して、鬼から人間に立ち返った日本人戦犯が日本へ帰国後に実践した証言活動を通して、侵略戦争の真実と、人間が人間であることを許さない戦争の本質を語り伝えてきた意義を強調
。
さらに侵略戦争を正当化する安倍政権に屈し、かつての戦争協力の反省や教訓に背を向けたメディアの報道の実態を指摘し「日本が再び誤った道に進まないために、父たちに代わって侵略戦争の真実と本質を語り広げていかなければならない」と決意を語りました。
討論では、世界に例を見ない「罪を憎んで人を憎まず」の精神で実践された、日本人戦犯に対する中国の寛大政策の意義が繰り返し強調されました。
戦争の本質を語り伝えた意義を強調する矢崎光晴協会事務局長(左から2人目)
そして、憎しみと報復の連鎖を断ち切った寛大政策と、「鬼」から人間性を取り戻した中帰連の体験を語り伝えている日本側の「撫順の奇蹟を受け継ぐ会」(解散した中帰連の後継組織)や日中友好協会などの戦後世代の努力を、未来への希望として受けとめる発言が相次ぎ、中帰連の反戦平和と日中友好の精神を踏まえて、日中両国民の連帯を強め奮闘していくことを誓い合いました。
再生の大地合唱響く
シンポジウムの翌29日には、瀋陽の東北大学で「『和平之声』演奏会」が行われ、約500人の聴衆を前に姫田光義団長の講演後、「再生の大地」合唱団が、日本人戦犯の「鬼から人間へ」立ち返った物語と人間讃歌の歌声を響かせ、会場は感動に包まれました。
この演奏会には中国から「遼寧北楓(ほくふう)合唱団」が参加。日中の両合唱団は平和と友好を願う歌声を通して、交流を深めました。
(M)