日中友好新聞
東アジア地域協力の展望示す
国際アジア共同体学会シンポ
国際アジア共同体学会主催の国際シンポジウム
聴衆に深い感銘
6月4日、国際アジア共同体学会主催の国際シンポジウムが、日本中国友好協会の後援を得て、盛況裏に行われた。会場は東京の専修大学神田校舎。総登壇者24人。聴衆参加者は90人を超え、白熱した議論が展開された。
総合司会は、南京から駆け付けた林敏潔教授。第1部、冒頭報告を大西広・慶応大学教授、基調あいさつを谷口誠・元国連大使、最後の記念講演を鳩山由紀夫・元首相、総括を西原春夫・元早稲田大学総長がそれぞれ担当、21世紀アジアの鳥瞰図を提示し、聴衆に深い感銘を与えた。
共通テーマは「『米中対峙』時代の東アジア地域協力を構築する」。中国脅威論を批判的に検討し、東アジア地域協力をどう構築していくのか、建設的な熱い議論を交わした。
4部に分けて進行
冒頭報告する大西広氏
第1部「自由論題部会」では、大西理事の「高成長から中成長に向かう中国経済」のもつ課題を、緻密な数理解析で示し、3人の若手研究者の報告が続いた。
第2部「『米中対峙』時代の東アジア秩序をどう読むのか」で、浅野亮氏(同志社大学教授)と矢吹晋氏(横浜市立大学名誉教授)が、特に南シナ海の中国の動向に焦点を当て、岡田充氏(共同通信編集委員)と凌星光氏(中国社会科学院研究員)が、中国外交の諸側面を多角的に論じた。
第3部「ASEAN経済共同体から東アジア地域統合へ」では、郭洋春氏(立教大学教授)が、中韓FTAの構造を明らかにし、TPPに代わる、東アジア主導FTA体制の構築の必要を強調した。
唱新氏(福井県立大学教授)は、ASEAN経済共同体を生んだ東アジア経済の実態を、部品貿易生産の仕組みから明らかにし、EUやNAFTA(北米自由貿易協定)と異質で構造化した経済一体化が、アジア経済共生ダイナミズムをつくる現実を解明し、米国主軸の太平洋トライアングルから、アジア域内主軸の新アジアトライアングルへの変容している現実を解明した。
それを受け、金堅敏氏(富士通総研研究員)が、包括的立場から議論した。
第4部「東アジア地域協力をどう進めるのか」では、美根慶樹氏(日朝交渉元政府代表)が、北朝鮮核問題に焦点を当て、東アジア核危機をどう乗り越えるか、外交交渉現場から助言と展望を示した。
次いで木村朗氏(鹿児島大学教授)が、沖縄問題と日米安保の矛盾を明らかにし、有事駐留論を軸にした東アジア安全保障政策の道を提示した。
日中友好の重要性確認
進藤榮一学会会長の総括
進藤榮一学会会長(筑波大名誉教授)の総括を経て、懇親交流会が開催された。参加者一同、21世紀アジアの新時代の到来と、それを支える日中友好の緊要性を確認し合った。
(進藤榮一)
示唆に満ち溢れた内容
千葉支部事務局長 笹本 健博
今回のシンポジウムは、「米中対峙」時代の東アジア地域協力をどう構築すべきかで示唆に満ち溢れていた。
「たゆたえども沈まず」のEUは英国離脱の状況下で呻吟中だが、東アジア地域では、先進国・中進国・途上国の発展段階の違いを相互補完しつつ、格差や体制の違いを阻害要因でなく推進要因にすることも可能ゆえ、デファクト共同体が望ましいのではないか。
東アジア地域包括的経済連携(RCEP)実現が目指すべき方向だと思う。