日中友好新聞
遺棄毒ガス被害者へ医療支援
NPO「日中未来平和基金」を設立
東京都内で行なわれたNPO法人「化学兵器被害者支援日中未来平和基金」設立総会
旧日本軍が中国に遺棄した毒ガス(化学兵器)による中国人被害者の支援を目的に、NPO法人「化学兵器被害者支援日中未来平和基金」(代表理事=小野寺利孝弁護士)が3月5日、東京都内で設立されました。
中国の民間基金などと連携し、被害者への医療支援、精神的な支援、広報活動、政策提言などを行うほか、「日中の医師と市民が協力し合って日中の市民が直接交流することにより、双方が信頼し合い、日中関係が良くなることをめざす」としています。
今回の基金団体は、「遺棄毒ガス問題解決の責任は日本政府や、製造した化学企業などにあることは明らか」としつつ、被害者たちの健康状態や生活実態が、時を重ねるに従って悪化している現実を踏まえ、医療支援・生活支援、とくに治療活動の支援に力を入れるために設立したものです。
日中協力の支援活動
具体的な活動内容は次のとおりです。
①中国の「旧日本軍細菌化学兵器被害者救済基金」に資金を拠出し、協力して、日中医師の治療方針についての協議と、中国の医師による被害者の治療を行う
②被害者に薬代を補助し、日々の治療を円滑に受けられるようにする
③遺棄毒ガスによる被害を市民に広く伝えるための講演活動を行う
④日中の市民ボランティアが被害者のもとを訪問し、交流を図ることによって、精神的に支援する
⑤化学兵器による被害についての調査、研究と提言活動を行う、など。
年会費は正会員(個人・団体)5000円、賛助会員(同)一口3000円。中国への進出企業や化学企業などにも協力を求めることにしています。
中国人に甚大な被害
旧日本軍は、国際法上、その使用が禁止されていた化学兵器を大久野島(広島県)など日本国内で製造し、中国に大量に持ち込み、戦場で使用しました。
それらは、日本の敗戦前後の時期に、地面に埋められたり、河川に投棄されるなど組織的に遺棄された結果、戦後、化学兵器であることを知らずに触れるなどして、数多くの中国の人びとに甚大な被害を与えてきました(チチハル事件、敦化事件など)。
イペリットによって、皮膚のびらんをはじめ、呼吸器・内臓・神経など全身に症状が及び、たとえ一命を取り留めても、時を経て疾患の進行や遅発性の症状が現れ、被害者たちは、健康被害にとどまらず、働けずに生活に苦しみ、就学ができずに将来の夢を失うといった、全人生にわたる被害を受けています。最近では、発がん性の問題も指摘されています。
日本政府の法的責任は
代表理事に就任した小野寺利孝弁護士
被害者は日本での裁判を通じ、日本政府への責任追及と救済を求めてきましたが、旧日本軍が中国に毒ガスを遺棄した事実や被害が発生する可能性は認めたものの、「広範囲にわたって存在しているため、事故時までに調査することは極めて困難だった」として、日本政府の法的責任は認めませんでした。
しかし一方で、裁判の目的が日本政府に被害者たちへの医療支援・生活支援のための制度を作ることを促すことにあったことから、弁護団や裁判支援者らは、日本の医師らの協力を得つつ、中国の医療機関を利用して6回に及ぶ日中合同検診を行なってきました。
日中友好協会は遺棄毒ガス問題での裁判などに取り組んできましたが、設立された「基金」と連携を取りながら協力していくことにしています。 (福田)
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