日中友好新聞
南シナ海を平和の海に!
問われる日本の対応
大村新一郎
習近平主席が1月27日、北京でケリー米国務長官と会見。同日の米中外相会談では北朝鮮の
核問題や南シナ海問題などを協議した(1月28日付、写真は新華ネット)
紛争を戦争にしない
昨年から今年にかけて、南シナ海をめぐる米中の「さや当て」が報じられています。昨年10月27日、米は「航行の自由作戦」と銘打ってイージス艦「ラッセン」を中国が岩礁(スビ礁)を埋め立てた人工島の周囲12カイリ以内を航行させました。
南シナ海は緯度0度(赤道)から北緯23度にわたって広がる熱帯・亜熱帯の海で、東シナ海とは違い日本からはるかに遠いところです。戦後の1947年、中国(当時は中華民国)は南シナ海のほぼ全域を取り込むような破線を地図に画して(形から「牛の舌」と呼ばれる)、この中は自国の領域だと主張し、それは現中国にも引き継がれています。
しかし、ここはベトナム、マレーシア、ブルネイ、フィリピン、そして台湾(地域)の主張する領土・領海とも重なり、紛争もあります。過去には軍事衝突も起きています。
その一方で、ASEAN諸国は中国と問題を平和的に解決する話し合いを続けており、衝突を避けるために、拘束力のある「南シナ海での関係国の行動規範」(COC)を早期に結ぶことでもASEANと中国は合意しています。
米中の制海権争い
そこに米が「航行の自由作戦」といって、軍艦を出すと、日本政府は直ちに「支持」を表明、安倍首相は、自衛隊を派遣して「常続的な警戒監視活動」を行うことが「検討課題」だと言い(11月11日参議院の閉会中審査)、11月19日の日米首脳会談でも検討を約束しています。既に南シナ海では、米空母も参加した米海軍と海上自衛隊の共同訓練も行われています。
「戦争法」によって、米艦と中国が武力衝突をしたとき自衛隊が「参戦」することが「法的には」可能になっています。衝突が日本の世論動向に影響を与えるように演出される危険もあります。日本は手を引くべきです。
「航行の自由」という看板にはごまかしがあります。旅客船、貨物船、タンカーなど民間の船舶は、他国の領海内でも航行の自由が認められています。アメリカが求めているのは「軍艦の航行の自由」なのです。
力をつけてきた中国は、現在、米国に対抗して、軍事強国化の道を進んでいます。「核抑止力」でも、アメリカに迫ることをめざしているようです。水上だけでなく、水面下で核ミサイルをもった双方の潜水艦と、それを攻撃する潜水艦が「隠れんぼ、追っかけっこ」をしています。
アメリカは相手の潜水艦を、いざという時にすぐに撃沈できるように、ありかを捕捉しておきたい。そうしたことも関連して、南シナ海の制海権の争いが、海底の資源とともに、ここでの米中の角逐の原因になっています。しかし、必要なのは、核保有国の米中が「核抑止力」信仰を捨てて、核兵器廃絶に向かうことです。
この地域の海を、軍事力の張り合いの場ではない、平和、協力、友好の海にすることについては、さまざまな提案が、インドネシアのユドヨノ大統領(当時)の構想を含め、出ています。憲法9条、非核3原則をもつ日本は、そうした方向でこそ、力を尽くすべきではないでしょうか。
(日中友好協会本部副会長)