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HOME > 日中友好新聞 > 2016年1月15日号

日中友好新聞

日本の暮らしに根づいた「中国」
豊かな文化交流を跡づけ


 

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蚕神を奉る「先蚕祠(せんさんし)」


 日中関係史をはじめ、東アジア文化研究の第一人者である王敏さん(法政大学教授)に古代からの日中両国の文化交流のルーツや共通点について執筆していただきました。
 30年以上、日本の中を歩き、中国、アジアとのゆかりを発見してきた。岡倉天心が言ったように「日本はアジアの貯蔵庫」そのものだ!

 


「蚕」敬う共通の習慣


 蚕と馬の間の恋物語「おしらさま」の話をご存じでしょう。中国にも類似の話が晋(?―前376)の『捜神記(そうじんき)』(※1)などにあった。内容の違うところもあるが、両国とも蚕に感謝して祀ってきた。現在も東北などで「おしらさま」(※2)を飾って祭るのに対して、中国江蘇省の盛沢鎮では蚕神を奉る「先蚕祠」が賑わっている。
 上海万博日本館の愛称は「紫蚕島」(かいこじま)と名付けられた。こちらも「蚕」にちなんでいる。両国国民による3600通の投票から選出された名称になる。というのも、両国にとって「紫」は高貴で神聖な色。互いに教科書から李白の「日は香炉を照らして紫煙を生ず」(望廬山瀑布・廬山の瀑布を望む)を学び、司馬遷の『史記』と白居易の『長恨歌』 から日本という美しい島を知る。さらに日本館の形は蚕のまゆの形に似ていて、青空に映えて紫色に輝く。


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「おしらさま」の像。これは馬(左)と娘の首がともに衣装から出ている「貫頭衣(かんとうい)」
頭からすっぽり布をかぶっている「包頭衣」もある。陸前高田市(岩手県立博物館所蔵)


 


漢字を媒介に結びつく


 他方、東京の湯島聖堂には中国と韓国にも共通する農業の神様である神農が祭られ、神農の「姜」という姓が中国と韓国にも多い。つまり東アジアに伝わって日常生活に根付いた風俗、慣習、信仰という無形の文化の伝来がいまだに生活の中で伝承されている。それを形にして残してくれたのが「漢字」という媒介である。漢字は東アジアに共有の概念を普遍化、生活化、日常化した。
 銀座や秋葉原などをにぎわう日本観光客がよく話題になるが、アジア人に日本の「近代化」風景はもはや珍しくない。日本人も、アジア人がもっと足元にある生活層の「日常」に振り向ける努力をしていただきたい。そこから日本の原点を見つけられ、未来への通路につながっている
。  過去に遣隋使・遣唐使と鑑真たちが、内外の良性循環をめざして相互の地域へ旅出たが、中日文化の結び及びそこに深く蓄積してきた知恵を再発見しませんか。

(法政大学教授)

 

(※1)中国の 東晋の干宝が著した奇怪小説集。
(※2)日本の東北地方で信仰されている家の神であり、一般には蚕の神、農業の神、馬の神とされる。
 特に青森県・岩手県でその信仰が濃厚に残り、宮城県北部にも密に分布し、関東の茨城県にも伝わる。


王敏(Wang Min)さんプロフィール

王敏さん


 1954年河北省承徳市生まれ。大連外国語学院日本語学部卒業。四川外国語学院修了。1982年国費留学生として宮城教育大学に留学。お茶の水女子大学で人文科学博士号を取得。法政大学教授。日中関係史をはじめ、東アジア文化研究の第一人者として活躍中。
 主な著書は、『鏡の国としての日本―互いの参照枠となる日中関係』『日本と中国 相互誤解の構造』『宮澤賢治、中国に翔ける思い』『禹王と日本人』『周恩来たちの日本留学』など多数。

 

 

 


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