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HOME > 日中友好新聞 > 2015年11月25日号

日中友好新聞

次期5カ年計画
「小康社会」の全面実現へ
5中全会決定を読む
先進国化を展望

 

 

shinbun

第18期5中全会が北京で開催(人民日報10月30日付)


 


苦境の中の中期計画


 明年からの第13次5カ年計画(2016~2020年)の基本枠組みを提案する中国共産党の第18期5中全会が10月26~29日に開催されました。
 07年以降、世界経済の最大の牽引者(中国経済の貢献度は毎年30%前後)である中国の、2桁から7%前後への成長の減速化、今年の輸入の大幅減(1~9月、15・1%減)が、世界経済に多大の影響や衝撃を与えてきたため、次の中期計画に強い関心が寄せられています。

 

 


生活・消費向上が中心


shinbun

発言する習近平主席(人民日報10月30日付)


 21世紀に入り4回目、習・李政権のもとでの初の5カ年計画です。5中全会決定の注目すべきポイントは次のとおりでしょう。
①計画の中心目標を、「第一の百年」(共産党創立[1921年]が起点)目標の「小康社会の全面的実現」とし、2010年比での1人当たり所得の倍増とした。
②前政権が定めた右の目標は、次の5カ年に6・5%成長が達成されれば十分に実現可能なことから、6・5~7%への成長率目標引き下げも視野に入れた。
③5中全会決定で最も印象的なのは、グリーンで効率的発展(「緑色」発展)を5カ年計画の基軸にすえたことです。環境問題の改善は待ったなしと認識された結果です。
④改革の全面深化により、20年までに、はっきりした成果を挙げるとしてきましたが、産業高度化をめざす「中国製造2025」(25年までに先進国の下位水準に追い上げる)、「インターネット+(プラス)」、「創業・創新」、「一帯一路」政策など、この間の新政策を、ふんだんに盛り込んだ。
⑤一人っ子政策を廃止し、二人目までを容認。今後の産児制限政策全廃への道を開いた。 ⑥中国で初めて、腐敗・汚職追及を本格的に始めた習・李政権らしく、その推進を強調した。
 5年前の会議と比べると、右の6点以外に、李首相ではなく、習主席が提案を行なった、令計画・元政治協商会議副主席など10人の高級幹部の規律違反を審議し、徐籍処分を追認した、富国強兵政策はむしろ強調されたなどの相違があります。
 同時に、賃金・所得向上、質と効率を軸とした発展の強調など多くの点が継承されています
   2020年には、高所得国(先進国)の入口に差しかかり、アメリカを上回る世界最大の経済体となることも目前です。

 


全面達成の現行計画


 消費・民生向上に重点をおき、質と効率、持続可能な発展への転換を基軸にすえた現行5カ年計画は7%成長目標(実績は約8%。11次計画期は11・2%)をはじめ、24主要指標はすべて達成される見込みです。これまでの計画では、研究開発や環境改善など3~4目標が未達成でした。


 


夢の生活が現実へ


人民日報
5中全会で強調された5つの発展理念を
報じる人民日報(10月30日付)


 21世紀中葉に先進国水準に追いつくという目標(「第二の百年」、1949年が起点)を掲げる中国の近代化・民主化は急テンポで進んでいます。
 誰もが家と車をもち、大学教育(14年の進学率37・5%)・学齢前幼児教育(同、70・5%)を受けられ、国外旅行(同、1・28億人)を楽しめる社会が手の届くところにきています。
 5年前は上海万博の年であり、中国が初めて日本の経済規模を上回った年でした。現在は日本の2倍をはるかに超え、その差は開くばかり。
 途上国から中進国へのこの急速な変化をもたらしたのは、計画的経済運営(社会主義市場経済)です。社会主義とは、共同富裕と社会的公正、人間の全面発達の実現である、とする中国の主張は、今後ますます説得力を増し、国際的影響力を拡大することになるでしょう。
 中国の現実は、腐敗・汚職、国外移住、大気・水・大地汚染など山ほどの問題を抱えています。また周辺国との摩擦、国際的批判を招いている対外政策や軍事力信仰などの問題もあります。
 にもかかわらず、豊かさと社会的自由への巨大な前進は誰しも認めざるを得ません。70年前の中国とは天と地ほどの大変化です。中国人にとり考えられなかった生活が現実となり、先進国化が射程に入りました。
 ともあれ、来年3月の全国人民代表大会において、13次5カ年計画(11次計画から「規画」と呼ぶ)の詳細と数値目標が決定されます。最終・具体案が注目されます。

(大内武 世界経済研究者)

 

 


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