日中友好新聞
市民の暮らし見つめる目
感動あふれる作品の数々
第47回全国きりえコンクール
前田尋
全国12府県から(昨年は8府県)45人・81点の作品が寄せられました。うち9人は初出品でしたが、日常の中から切り取った感動があふれています。
原点は中国剪紙
日中友好協会の創作きりえ運動は60年代後半に始まりましたが、その原点は中国剪紙です。09年、剪紙はユネスコの世界文化遺産に登録されました。ハサミと刀の二通りの切り方がある剪紙は、技術的にかなり高度のものから単純な形のものまで幅広いのです。
模刻から始まったきり紙活動が創作へと発展し、絵画的なきりえにさまざまな工夫が加えられ、今日の多様な表現は日本独自のものとなりました。
最優秀作―
情感あるまとまり
さて、4月19日に開かれた審査会の結果、最優秀作には和歌山の中西知恵子さん「祭り」が選ばれました。右隅に黒の色面、左上に空の空間を配し、左方向から斜めに傾く神輿(み こし)と躍動感のある人物が、黄や赤、紫と限定された色彩の中に、引き込まれるような情感のあるまとまりを見せていました。
日中友好協会会長賞には、愛知・藤井恵美子さんの「川崎の朝」。グラウンドの一隅、大きな樹木の枝葉を丁寧に描き、わずかに彩色した緑とグレーは白黒の美しさを際立たせています。
多彩なテーマで表現
優秀作・宮下紀代美さん「はにわのある公園」。置かれた復元はにわが、集会でもしているようで、見る人に話しかけてきます。遠く子と犬を連れ散歩する人も効果的です。
安藤一代さん「掘り出し物は…。」。大須観音の境内、骨董屋、テントが並び、売る人、買う人、幟旗(のぼり ばた)とバックに大きな建築、複雑な重なりを描き分けた構成力は素晴らしい。
加藤文代さん「雪解け」。雪国の牧場、芽吹く草を食(は)む馬の群れ、手前の泥濘、奥の残雪と光と影の配置も効果的です。
荒木史子さん「エーゲ海あかるい通り」。光あふれるリゾート地の賑やかな通り、観光客が買い物をして行き来する石畳や建物、人物がうまくマッチしてざわめきが聞こえそうです。
藤井さんのもう一点「おともだちのかんちゃんです」。アスレチックか、ロープで編んだ手すりを前に少女と少年。縄編みの細やかさと対象的に二人の表情は明るい。類型的にならず、思わず笑みが浮かぶ。
平野ひとみさん「日よけ暖簾のあるお店」。宿場町の一角、スパッと斜めに伸びるのれんが強い。中心に置く牡丹、のぞきこむ二人連れ、すっきりした構図で、周りの景色も見えてくるようだ。
早瀬ふさこさん「デリーの若者たち」。インドの町中を行く人たち、背景を描かず、白黒で人物の顔を黒くして洋服の柄を丁寧に描く。二人の会話がはずんでいる。
成田静子さん「かがり火に抱かれて(西馬音内盆踊)」。西馬音内盆踊りからヒントを得て、踊る編笠の女性を炎の情念にゆだね、その地の物語を見せようとする。
亀田達子さん「夏の朝に」。カボチャの花が咲き、温室がある田舎の坂道を行く人一人、何ということのない一角の一瞬を描いてすがすがしい。
中西さんのもう一点「運動会」。昼食のひと時、母子と祖母が木陰で弁当を開く、母と子の表情は穏やかで、分け与えようとする祖母は力強い。
桜井久美子さん「積み木で遊ぶマシュー」。高く積んだ積み木になお、真剣に重ねようとする幼児。部屋の一隅を見せて、全身は手先に集中する。
竹内宜子さん「こうたい」。鉢植えの観葉植物を真上から見る。新しく四方八方に伸びた葉の下に古い葉は枯れ朽ちようとする。人の生き方を重ねて思う。
ぜひとも実物鑑賞を
作者の思いにあふれた数々の作品群です。入選作以上の37点、ぜひとも実物でご覧いただきたいと思います。 そのためにも全国で巡回展が開かれますよう。
(きりえ委員会委員長)