日中友好新聞
中国全人代
経済成長めざす「新常態」へ
量から質へ「改革」に全力
藤本 隆
中国全人代の開幕式=3月5日、北京の人民大会堂
中国の国会にあたる全国人民代表大会(全人代)が3月5日から15日まで、北京で開かれました。中国政府は、経済の高度成長から安定成長へと転換し、経済の質を高める「新常態(ニューノーマル)」を進める決意を示しました。
成長目標、3年ぶり下げ
3月5日、李克強首相が政府活動報告の中で、今年の経済成長目標を3年ぶりに引き下げ、7%前後とすると宣言しました。
そのうえで、この目標は「必要性と可能性を考慮した結果であり、小康社会(ややゆとりのある社会)の全面建設という目標と合致している」と指摘。「サービス業の比重が高まり、中小零細企業が増え、経済規模も大きいため、7%前後の成長で十分な雇用を確保できる」と述べました。
一方、李首相は15日の記者会見で、「目標の実現は容易ではない」と発言。中国経済は成長を抑える圧力に直面しており、多くの危険があると指摘しました。
「新常態」推進に向け李首相が強調したのが「改革」の必要性です。政府活動報告で、「体制・仕組みの弊害と構造的矛盾が『行く手を遮る虎』となっており、改革の深化と経済構造の調整をしなければ、安定的で健全な発展の実現は難しい」と強調。「改革」という言葉を86回も使い、金融や税制、国有企業などの改革を訴えました。
「反腐敗法」を制定
習近平指導部が大規模に進めているのが、反腐敗闘争です。中国最高人民検察院(最高検)の報告によれば、2014年に汚職などで立件された公務員は、13年比7・4%増の5万5101人に上りました。この中には、28人の副省長・次官級以上の幹部も含まれています。
中国の政治学者は「反腐敗闘争は、腐敗がはびこり、このままでは中国共産党も国も亡びるという危機感から始まった。同時に、現在の体制から利益を得ている既得権益集団を倒し、改革を全面的に進めようという意図もある」と語ります。
最近は、党・政府の幹部と同時に、石油などの国有企業幹部の摘発も相次いでいます。15日には、大手国有自動車メーカー・第一汽車集団の会長が規律違反で調査を受けていると発表されました。今後は、金融関連の国有企業にも調査が及ぶ見込みです。
李首相は5日、「腐敗分子を決して容認しない。腐敗行為は指導機関でも末端でも厳しく罰しなければならない」と、今後も反腐敗闘争を続ける決意を表明。また、「制度的『囲い』をつくり、腐敗の土壌を取り除く努力をする」と述べました。全人代の張徳江常務委員長も「反腐敗法」制定を進めると表明。今後、腐敗防止の有効な制度が打ち出されるのか注目されます。
記者会見する李克強首相=3月15日
「日本は歴史直視を」
今年は、第2次世界大戦終結70年の年です。中国は9月3日を「抗日戦争・反ファシズム戦争勝利」の記念日と定めており、70年を記念し、大規模な閲兵式を開催します。
中国政府が心配しているのが、安倍晋三首相が8月に発表する「安倍談話」の中身です。李首相は15日、「一国の指導者は、先人の業績を引き継ぐだけでなく、先人の犯罪行為がもたらした歴史の責任も負わなければならない」と、安倍首相に日本の侵略を認識するよう強く求めました。その上で、「日本の指導者が歴史を直視すれば、中日関係の改善と発展の新たな契機になる」と述べ、今年が日中関係にとってのチャンスになりうると指摘しました。
8日に記者会見した王毅外相も「加害者が加害の責任を忘れなければ、被害者は受けた傷を癒やす可能性が出てくる」と、日本政府に加害の責任を認識するよう注文。「70年前に日本は戦争に敗れたが、70年後に再び良識を失ってはならない」と訴えました。
中国の指導者の言葉を受け止め、今年を日中両国の真の和解の年にしなければとの決意を新たにしました。
(ジャーナリスト=北京在住)