日中友好新聞
「慰安婦」問題の真実を学ぶ
東京都連「講演と映画の集い」
大森典子弁護士(中央奥)の講演に155人が参加(東京都連主催の「講演と映画の集い」)
戦後70年、日本が過去の問題にどう向き合えるのか試される年―日中友好協会東京都連合会主催による「講演と映画の集い」が2月14日、東京都内で開催され、155人が参加しました。
4つの国の5人の被害者が「慰安婦」の実態について証言するドキュメンタリー作品「終わらない戦後」(キム ドン ウォン金東元監督=2008年)が上映され、大森典子弁護士が「『慰安婦』問題の真実」というテーマで講演しました。
加害を否定する策動
昨年8月、「慰安婦を強制連行した」とする吉田証言に関する朝日新聞の記事取り消しは、「慰安婦」問題の全面否定の世論喚起のみならず、朝日バッシングなど特定マスコミへの圧力や河野談話の見直し要求など、「慰安婦」問題からかい離して、加害の事実を否定する歴史認識を定着させようとする動きとなってきています。
大森弁護士は、こうした動きが地方議会への申し入れや朝日新聞不買運動など「草の根」的な手法を使っていることに注意をすべきだとしたうえで、「慰安婦」問題の核心は何かということの再確認を促しました。
大森弁護士の講演に耳を傾ける参加者たち
監禁し性行為を強要
大森弁護士によると、「慰安所」の設置目的は兵士による強姦予防と兵士の性病罹患防止にあり、日本軍中央が作戦上の必要から計画し実行した制度でした。また、映画での証言にあるとおり、そこにいた女性たちは事実上監禁され、兵士との性行為を強要された「性奴隷」状態におかれていました。
たとえだまされて来たとしても「意に反して」行為を強要されたことが問題であると指摘し、「慰安婦」を否定する人たちが主張する「強制連行がなければ慰安婦問題はなかった」とする主張は、論点のすり替えであり国際社会の認識とは異なることを改めて強調しました。
「慰安婦」問題を否定する昨今の動きには、慰安婦は性行為の対価として金銭をもらっているのだから「公娼」制度下の売春と同じである、公文書や加害者の証言がないため事実ではない、日本軍は慰安所設置の制度化に関与していないなどとしていますが、女性の人権そのものを侵害することには変わりありません。
さらに、フィリピン・中国・オランダなど朝鮮半島以外の女性被害者の存在を意識的に無視し、特定民族の差別を助長することは、ヘイトスピーチと共通のものがあるといいます。
「慰安婦」問題をなかったことにしたい目的は、村山談話の実質的否定を定着させ、今年8月に出る「安倍談話」に反映させることです。しかし、国際的に見ると日本の人権感覚は明らかに遅れており、国際社会からの孤立が際立ちつつあります。それは、マスコミが国際世論をきちんと報道せず、政府批判の喚起がないことも原因となっています。
世界に共通する人権感覚を
このような状況の中、私たちはどうすべきか。大森弁護士は次のように述べます。「慰安婦」の被害事実を具体的に映像などで広めること、被害者は朝鮮半島だけでなくアジア各国にまたがること、この問題を女性の人権問題として位置付けること、「公娼」制度のもとでの女性の人権に対する正しい事実認識をもつこと、「慰安婦」問題の背景にある侵略戦争の実態を知ること。
こうした認識を日本社会が共有し、歴史を否定する動きに圧力をかけていくかが大切です。また私たちがメディアの独立性を守り、国際社会からどう見られているかを常に意識することで、日本が国際社会で通用する法意識、歴史認識、人権感覚をもつ国となることが重要だとして講演を締めくくりました。
被害事実を映像で広め人権問題と位置付けること、侵略戦争の実態を知ることなどを強調した大森弁護士
「人間の尊厳を抹殺」
参加者のアンケート回答では、次のような感想が寄せられました。
「今まで断片的に写真などを見ていましたが、映画になるとすさまじい説得力をもって迫ってきます。日本軍のやったことは人間としての尊厳を抹殺するものであり、それを否定する日本政府は日本という国と国民を貶めて世界中に知らせるようなものです」(70代女性)
「私の祖父も軍医として戦争に参加したと聞いています。全く無関係ではなかったと思います。もう亡くなってしまいましたが、もし祖父に被害者の方への責任があったとすれば、祖父に代わって謝罪させていただきたいと思います」(40代男性)
「映画と大森講師の講話を通じて、慰安婦問題の本質とわれわれの心構えの重要性を認識できました」(70代男性)」。
(滝沢)