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HOME > 日中友好新聞 > 2014年11月25日号

日中友好新聞

近代的民主主義国家へ脱皮
4中全会にみる中国政治の転換
井手啓二  

 

第18期4中全会で、習近平総書記が重要演説を行なったと報道する人民日報(10月24日付)

 

 「法治」の新時代へ

 

10月20日〜23日に中国共産党第18期4中全会が開催されました。会議は「法治の全面的推進に関するいくつかの重要問題の決定」を採択し、同時に党中央委員を含む幹部6人の除籍と3人の中央委員の補充を決めました。
23日にコミュニケ、28日に決定全文(7章、1・7万語)と習近平総書記の起草状況説明が公表されました。
決定の各章の内容は、@法治国家建設の総目標と基本原則A憲法の重視、その実施と監督B法治政府C司法の公正と信頼性の向上D法治観念の強化と法治社会E法曹関連人材の育成F法治の全面的推進への党の指導―です。


中国共産党中央委員会の「法治の全面的推進に関する決定」を報道する人民日報(10月29日付)

 

 

 

 

社会主義市場経済は本質的に法治経済

 

 中国共産党が「依法治国」(法にもとづく国家統治)を主題とする中央委員会総会を開催したのは党史上初めてのこと。
しかも、「社会主義市場経済は本質的に法治経済である」と新たに規定し、法治は憲法を核心とし、12月4日を憲法記念日とする、権力を制度のかごの中に閉じ込める、司法の独立など、方向と内容において近代的民主主義国家と本質的に変わらぬ方針を打ち出しました。
それでも一党制の堅持、共産党指導下の法治ではないかとする批判は当然あるでしょう。しかし途上国では一党制はかなり一般的であり、中国の一党制は国民党政権により導入されたもので中国共産党はその反対者でした。政権掌握後なぜ一党制を踏襲したのか、究明すべき点です。
同時に一党制とはいえ、現代中国の政治が人民代表大会制、政治協商会議制などをもち、コーポラティズム色が濃厚であるという点をみておく必要があります。

 

 

 

瞠目すべき自己革新能力

 

 ともあれ、世界にはさまざまな民主主義があり、優劣が試されています。中国の経済、民生や民主主義が途上国・中進国水準であることは中国人も深く認識しており、それゆえにキャッチアップに懸命です。
他方、アメリカや日本にない民主主義を自負してもいます。戦争愛好国家でも、カジノ国家でも、生活困窮者を放置する国でもないからです。米・日の産軍複合体制・政財官の三位一体制の支配に当たるものは共産党支配でしょう。中国は、独立国家であること、経済規模、14億人の共同富裕化をめざしている点において優っています。
人治を政治文化の伝統とし、最近まで「人治と法治の結合」などと議論していた中国が今回「法治と徳治の結合の堅持」など古風で独特の言い回しながら、法治国家、法治政府、法治社会の実現など近代的民主主義への前進を宣言した意義はきわめて大きなものがあります。経済と政治の改革が今後相携えて進む、改革の政治的障碍の打破を意味するためです。

 

 

 

法治の五大システム

 

 今回の決定は、法治の全面推進の五大システムとして@法律規範体系の完備A効率的な法律実施B厳格な法治監督体系C有効な法治保障D党内法規体系の完全化をあげ、今後の任務として司法の独立性と信頼性の強化、裁判官・検察官など、法曹関係者の育成、行政幹部による重要意思決定の審査制、その終身責任追及制度の樹立、最高裁の全国巡回法廷など、注目すべき新方針を掲げています。
「法はあれども、実行されない」、「法律違反でも責任は追及されない」現実を2020年までに基本的に変革するとしています。どこまで成功するのかが注目点です。

 

 

 

二大課題の突破へ

 

 21世紀の第2の十年代に中国は極めて困難な問題に直面しています。成長が持続可能なインテンシブな経済発展方式への転換、社会的不満・不安定を解消しうる政治・経済システムの改革という、容易ならざる二大課題の実現です。
 3中全会の「改革の全面的深化」方針、4中全会の「国家統治改革」方針により、習・李新政権は予想以上の答案を書き上げることができたようです。
 中国社会は、1992・93年の社会主義市場経済化路線の採択に匹敵する画期を迎えた、中国社会主義は発展の新たな段階に突入したと、私は見ています。法治以前の現実がどこまで変わるのか、効率的経済への転換がどこまで進むのかに注目したい。
(長崎大学名誉教授)

 

 

 


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