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HOME > 日中友好新聞 > 2014年7月15日号

日中友好新聞

歴史を反省し謝罪・賠償を
中国で「強制連行」提訴広がる
藤本隆

 

河北省石家荘市内の公園で強制連行被害者の追悼集会を開く被害者と遺族ら=4月2日(写真はすべて筆者提供)

 

 

 中国各地で、戦時中の強制連行問題をめぐり、被害者や遺族が日本企業に謝罪と賠償を求め、国内の裁判所に訴状を提出するケースが広がっています。



被害者の尊厳と人権のため


 2月下旬、中国人強制連行の被害者と遺族約40人が、日本コークス工業(旧三井鉱山)と三菱マテリアル(旧三菱鉱業)に対し、謝罪と賠償を求める訴状を北京第一中級人民法院(地裁)に提出しました。
 原告は、2被告に対し、日中両国の主要紙に謝罪広告を掲載すること、1人100万元(1元は約17円)の賠償金の支払いなどを要求。「中国国内での訴訟は被害者の尊厳と人権を守るためであり、2被告は加害の事実を認め、被害者に誠実な謝罪と賠償をしてほしい」と強調しました。
 また「(強制連行は)日本政府と2被告を含む日本の関係企業が共同して計画、実施した重大な人権侵害行為だ」と日本政府の責任にも触れました。
 約1カ月後の3月中旬、裁判所は訴状を正式に受理したと発表しました。中国の裁判所が訴状を受理したのは初めて。1990年代半ばから日本で行われた10件以上の中国人強制連行裁判は、2011年にすべて終結しており、強制連行問題をめぐる新しい動きとして注目されます。
 原告代理人である康健弁護士は「強制連行は重大な人権侵害で、日本は責任をあいまいにしてはいけない。この問題が解決できなければ、中日友好は表面的なままになる。日本が正しい立場で誠意をもって問題を解決してこそ、中日友好は実質的な意義をもち、飛躍的に発展することができる」と強調します。



河北・山東で800余人が

 


裁判所に訴状を提出した原告ら=4月15日、山東省済南市(左から2人目が劉煥新氏)

 

 

 この動きは、各地に広がっています。4月2日、河北省石家荘市で、被害者と遺族計149人が三菱マテリアルに謝罪と賠償を求める訴状を河北省高級人民法院(高裁)に提出しました。
 4月15日、山東省済南市で、遺族計700人が三菱グループの現地法人2社に謝罪と賠償を求める訴状を山東省高級人民法院に提出しました。1944年に北海道の炭鉱に連行された後に逃亡し、13年にわたり山中に隠れ続け、中国帰国後、日本で裁判闘争を行なった故・劉連仁氏の長男・劉煥新(りゅうかんしん)氏も原告代理人として参加。「強制連行問題など歴史問題の解決は中日友好にとっても重要だ」と述べました。
 一連の動きの大きな特徴は、原告のほとんどが父親の思いを受け継いだ遺族だということです。こうした遺族を何人か取材しましたが、父親が亡くなる直前に語った「尊厳を取り戻してほしい」「平和と中日友好のため、私の意志を引き継ぎたたかってほしい」との言葉を大事にしていました。



民間と個人は請求権もつ

 

 日本政府は「1972年の国交回復のさいの日中共同声明後、日中間に請求権の問題は存在しない」とし、賠償問題は解決済みとの立場をくずしていません。これに対し、中国国営・新華社通信は、共同声明が指しているのは政府の賠償請求だけで、「中国の民間と個人の対日賠償請求権は含まれず、影響を受けない」と主張。中国外務省報道官も「日本側は歴史に対する責任ある態度と正確な認識をもって、歴史に残された問題を適切に処理してほしい」と求めています。
 2007年の最高裁判決は、原告の請求を棄却したものの、日本の加害企業に対し「本件被害者らの被害の救済に向けた努力をすることが期待される」と付言しました。戦時中の加害企業は35社ですが、うち20社以上がいまも存続しています。
 これらの企業と日本政府に対し、歴史に真摯に向き合って被害者への謝罪と賠償を行うよう求めていく必要があります。
 (ジャーナリスト=北京在住)



 


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