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日中友好新聞

2014年4月5日号1面
全人代 2014
習近平政権1年
 「改革」への決意示す
  藤本 隆

 

 

3月5日、全人代の開会式(北京の人民大会堂 写真提供=藤本隆氏)

 

 中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)が3月5日から13日まで、北京の人民大会堂で開かれました。昨年3月の習近平政権の発足から1年。腐敗、汚染、治安など、さまざまな問題が噴出するなか、中国政府は「改革」への強い決意を示しました。  5日の開会式で政府活動報告を行なった李克強首相は「改革」という言葉を77回も繰り返しました。李首相は「背水の陣を敷いて一戦を交える気概をもつ」、「凝り固まった既得権益の垣根を突破する」など強い言葉で決意を表明。経済改革をまず進め、政治、社会、司法など各分野の改革を深めるという方向性を示しました。

 

 

「テロとの闘い」強調

 

 経済分野について、今年の経済成長率目標は昨年と同様7・5%前後に設定。国有企業改革や金融改革、市場の役割を強める改革などを打ち出しました。
 全人代の直前、3月1日に雲南省・昆明駅で29人が犠牲となる無差別殺傷事件が起きたため、テロ・治安対策も焦点になりました。開会式冒頭で、代表全員が起立し1分間の黙とうをしました。
 李首相は、テロ事件に対し「強烈な非難」を表明。テロ犯罪と「断固たたかう」姿勢を示しました。また「少数民族と民族地域の発展を支援する政策を真剣に実行する」など、「民族の団結」を呼びかけました。

 

 

汚染車両の大量廃棄へ

 

 深刻化する環境汚染に関し、「貧困とのたたかいと同様、汚染とも断固としてたたかう」、「環境汚染は粗放な発展方式に対する大自然の赤信号だ」と強調。呼吸器障害などを引き起こす微粒子状物質「PM2・5」への対策として、小型石炭ボイラーを5万台廃棄、石炭火力発電所に脱硫装置取り付け、排ガス基準を満たしていない車600万台の廃棄―などの具体策に踏み込みました。  13日の記者会見で李首相は、違法に汚染物質を排出する行為に断固たる処罰を加え、排出を見逃した監視者の責任も厳しく追及する方針も明らかにしました。

 

 

「腐敗幹部必ず処罰」

 

 中国政府が力を入れているのが反腐敗キャンペーンです。中国最高人民検察院の報告によると、2013年に汚職などの職務犯罪で立件された公務員は12年比8・4%増の5万1306人に上りました。中央・地方政府の高官も8人立件されました。  李首相は会見で、「腐敗があれば必ず処罰する」、「誰であろうと地位の高低に関係なく、党の規律や国の法を犯せば、厳粛に取り調べ、懲罰する」と述べました。今後も党幹部や政府高官への追及が続くとみられます。

 

 

全人代代表と交流する習近平主席 (人民日報3月8日付)

 

 

日中関係「歴史逆行許さぬ」

 

  日中関係で、李首相は名指しを控えながら、「われわれは、第2次世界大戦の勝利の成果と戦後の国際秩序を守りぬき、歴史の流れを逆行させることを決して許さない」と訴えました。靖国参拝や侵略戦争を美化する発言を繰り返す安倍晋三首相ら日本の一部政治勢力を意識したものとみられます。  3月8日に記者会見した王毅外相も「日本の一部の人びとが当時の侵略の歴史を覆そうとするならば、世界の平和を愛する人たちは絶対に許さないだろう」と日本政府の姿勢を批判しました。  一方で、「現在の(中日の)状況は見たくないものであり、中日両国民の利益に符合しない」と指摘。「現在の中日関係を第1次世界大戦前の英独関係と同一視する意見があるが、2014年は1914年(第1次大戦開戦)ではなく、1894年(日清戦争開戦)でもない」と述べるなど、日中関係改善への期待と、日中間で戦争を起こさない決意を明らかにしました。  安倍首相は1月、スイスでの海外メディアとの懇談の際、現在の日中関係を第1次大戦前の英独関係になぞらえたため、「日本の首相は戦争を否定しなかった」と欧米メディアのなかで物議をかもしました。王毅外相の言葉を受け止め、侵略の歴史を否定する勢力を許さないためにも、歴史を学ぶ必要性を改めて感じました。
(ジャーナリスト=北京在住)

 

 

 

 


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