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日中友好新聞

2013年12月5日号1面
中国共産党3中全会

「改革の全面的深化」へ
問われる指導部の手腕
 藤本 隆

 

北京の中心部、天安門前広場(11月11日筆者撮影)

          
北京の中心部、天安門前広場(11月11日筆者撮影)


 中国共産党第18期第3回中央委員会総会(3中全会)が11月9〜12日に北京市内で開かれ、「改革の全面的深化」に関する「決定」を採択しました。
 各党大会後の1中全会、2中全会が主に人事案件を決めるのに対し、3中全会、その後の大きな方針、とくに経済改革に関する新たな方針が示されます。過去には、「改革開放路線」や「社会主義市場経済」などの重要決定が打ち出されました。習近平氏を総書記とする党指導部がどのような方針を出すのか、大きな関心が集まりました。

 

注目される2組織の新設

 

 今回の3中全会の特徴は、「改革の全面的深化」を掲げ、経済改革だけでなく、政治や社会の改革にも踏み込んだことです。また「2020年までに重要な領域と肝心な部分で改革の決定的な成果を上げる」と強調。中国共産党は昨年11月の党大会で、2020年までに「小康社会(ややゆとりのある社会)」を全面的につくるという目標を決めています。この実現のためにも、改革への強い決意を示したといえます。
 3中全会の決定で注目されるのが、二つの新たな組織の創設です。一つが、改革を着実に進めるための「全面深化改革指導小組」。改革の全体的な設計、調整、督促などを任務とします。
 もう一つが「国家安全委員会」です。複雑化する国際環境と、不安定化する国内情勢に対応するため、国家の安全に関わる仕事を統一して計画する強力な機構と位置づけられています。
 ある中国の外交問題研究者は「国家安全委員会は、外交部、国防部、公安部、財政部などの政府機関、さらに各種研究部門や国営メディアなどを統括した機構になる可能性がある。国内外で問題が起きた時にすばやく決定でき、長期的な対外政策や安全保障戦略を練る大きな権限をもった機構になる」と解説。米国の国家安全保障会議(NSC)などをモデルとした「中国版NSC」とも指摘され、トップには習近平氏が就くといわれています。

 

「一人っ子」政策を緩和

 

 決定事項で、大きな話題となったのは、「一人っ子政策」の緩和です。夫婦のどちらか一方が一人っ子ならば、2人の子どもを産むことができるようになりました。
 現在は、一人っ子同士の夫婦に限り、2人の子どもを持つことが認められています。導入から30年以上たった「一人っ子政策」については、急速に少子高齢化が進む中で、専門家から廃止や緩和を求める意見が相次いでいました。
 また、裁判など司法手続きを経ずに矯正を名目として容疑者を拘束し、半年以上にわたり強制労働させる「労働教養」制度の廃止を決定。死刑を徐々に減らしていくことも盛り込みました。

 

国有企業も改革へ

 

 経済改革では、「公有制と非公有制経済はどちらも社会主義市場経済の重要な構成部分」とし、「公有制の主体的地位を堅持する」と強調。市場経済を強める方針や国有企業改革も盛り込みました。李克強首相を中心に、経済発展パターンの転換を進めることができるのかが注目されます。
 ほかにも、農民個人の財産権を幅広く認めて都市・農村の二元化の解決を進めることや、反腐敗のために党中央規律検査委員会の監督を強める、深刻な大気汚染に対し企業など向けに汚染物質の排出規制制度を実施する、所得分配制度を改善する―などが提起されました。
 3中全会直前の10月28日に北京の天安門前で車の突入・炎上事件が発生。5人が死亡し、40人が負傷する惨事となりました。11月6日には山西省の省都・太原市の党委庁舎前で連続爆発事件が発生。容疑者は「社会への報復」が犯行の動機だと語っています。
 いまの中国には、不公正な社会への不満が高まっています。中国共産党が国民の求める「改革」を進めることができるのか、党指導部の手腕が問われています。(ジャーナリスト=北京在住)


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