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日中友好新聞

2013年10月15日号1面
日本琵琶と中国琵琶
その歴史と魅力に迫る

          

日本琵琶奏者の小林桜欄さん(左)と中国の琵琶奏者の鮑捷さん


 東京都立川市には2人の琵琶奏者がいます。ひとりは、日本琵琶の名手・小林桜蘭さん。もうひとりは、新進気鋭の中国の琵琶奏者・鮑捷さん。それぞれの琵琶にかける思い、琵琶の歴史とその魅力について聞きました。

 

琵琶は撥弦楽器の総称

 

 琵琶(びわ、p〓(※1)p〓(※2))は、弓を使わずもっぱら弦を弾いて音を出す撥弦楽器です。その演奏方法と出る音から琵琶≠ニいう名前がついたといいます。外を向いて弾く動作を琵≠ニいい、内側を向いて弾く動作を琶≠ニいいます。
  そういう演奏法で弾く楽器がすべて琵琶と呼ばれていました。「琵琶」はすべての撥弦楽器の総称なのです。

 

 

 

それぞれのルーツは

 

 中国琵琶は4世紀頃にシルクロードを通って伝わってきました。敦煌の壁画にはその姿が生き生きと描かれています。琵琶の原型は西アジアのウードという楽器です。ウードはリュートやギターの祖先でもあります。
  ウードの時代は音階をフレット(琵琶で品や相と呼ばれるもの)で区切っていませんでした。時代を下るごとに仕切りの数は増え、最終的にはオクターブを12に区切った半音階をもつようになりました。現在の中国琵琶はフレットが30あります。
  中国琵琶は時代とともに大きく変化し1950年代に完成し、西洋の音階に対応できる楽器になりました。
  日本琵琶は奈良朝時代(8世紀)に中国から伝来したといわれています。その後、日本で改良され、楽琵琶、盲僧琵琶、平家琵琶、薩摩琵琶、筑前琵琶、錦琵琶など五弦琵琶が主流となっていきます。奈良の正倉院には唐の琵琶が5面、五弦琵琶が1面保存されていますが、このうち五弦琵琶は世界で唯一の現存する実物です。
  日本琵琶は遣隋使・遣唐使によって日本に持ち込まれました。平安時代の838年に入唐した遣唐使の藤原貞敏が琵琶を習い、翌年に唐の琵琶と楽譜を持ち帰り、日本琵琶の発展に貢献しました。

 

 

琵琶をめぐる逸話

 

 中国琵琶の裏側は、音を力強くするために紅木や紫檀など堅い木でできています。表は音をよく響かせるように少し柔らかい木桐で作られています。弦はスチールでできていて、5つの爪を使って演奏します。
  中国琵琶の弾き方も、最初はバチで弾いていました。今は〈義甲〉という人工の爪を付けて弾くようになりました。音色が高く鋭く日本琵琶と対照的です。日本が5種(弦)に分かれているのに比べ、中国琵琶は1種(弦)だけです。また日本琵琶は「語り」をつけて演じますが、中国琵琶は「語り」はつけません。
  中国では唐時代(600年代頃)が最も盛んでした。宮廷音楽の重要な楽器で、琵琶の名手と言われるような人も現れました。
  逸話もたくさんあります。秦の時代(221年頃)には、始皇帝で有名な万里の長城の建造に従事した人びとが、仕事の休憩時間に手で敲(たた)く鼓に弦をつけて弾いていました。楊貴妃も好んで演奏したといわれています。後世の人は、これを「秦琵琶」と呼びました。白居易の詩「琵琶行」は有名です。
  日本琵琶も硬い櫛(つげ)でできており、弦はシルクで撥(バチ)で弾きます。音色が優しいのと同時に、強く弾くことによって勇壮な響きを出すことができます。戦国時代は尖った先が武器になったともいいます。
  そのひとつ薩摩琵琶は、島津忠良が武家の子弟の士気振興と思想の健全化をはかるために、数編の歌詞をつくり、琵琶法師に作曲させ演奏したのが始まりといわれています。
  日本で琵琶が本格的な芸術として登場したのは平家琵琶からです。「平家物語」を題材に「語り」をつけ今でも演じられています。江戸中期からは武士以外の町民にも親しまれ、薩摩琵琶の名人永田錦心によって娯楽性と優美性を増し、特に大正時代以後は「町風琵琶」として広がっていきました。

 

 

近く立川市で日中琵琶共演

 

 それぞれに演じてもらいました。素人には専門的なことは分かりませんが、双方ともそれぞれの特徴がありその音色に強く惹かれました。琵琶談義≠ェ進むうちに、小林さんが「息子の和生(2010年の9月5日号「私と中国」に登場)は二胡をやるのですよ」と話が進みました。和生さんは若い頃、故人となった忌野清志郎さん(歌手)や俳優の三浦友和さんらと音楽グループをつくっていました。
  小林さんが「10月20日に立川市で琵琶演奏会≠やります。出演しませんか」と持ち出すと、鮑さんが「ぜひよろしく」と話がまとまり、日本と中国の「琵琶共演」が予定されています。孫ほどの年齢差の2人ですが、それを全く感じさせない対面でした。
  日中琵琶交流がこれを機に進むかもしれません。(宣)

 

▽びわ演奏会=10月20日(日)正午開演、立川市女性総合センター1F(アイムホール)入場無料、問い合わせはрO42―535―7764小林桜蘭方へ

☆小林桜蘭さん

 福島県郡山生まれ。長唄師匠の母の影響で幼児より邦楽に親しむ。15歳より琴を学び、1985年、錦琵琶宗家・水藤伍郎師の演奏に感銘し入門、奥伝(桜号)を許される。中野芸術劇場、日本橋三越劇場、江ノ島奉納演奏や立川9中など地域で活動。現在、立川琵琶研究会会長。

☆鮑捷さん

 中国天津市生まれ。8歳で琵琶に出合い、天津音楽大学付属中学校入試で、琵琶で唯一の国費学生に合格。天津音楽学校で琵琶を専攻。卒業後、「天津大学北洋芸術団」の琵琶奏者として活躍。2002年に来日。日中学院で日本語を習得、07年に東京学芸大学卒業。日本各地でコンサートや各種イベントに出演。
問い合わせ=baojie7711@yahoo.co.jp

日本琵琶奏者の小林桜蘭さん(左)と中国の琵琶奏者の鮑捷さん
実演する鮑捷さん

〓(※1)は二声のi
〓(※2)は二声のa


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