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日中友好新聞

2013年9月25日号1面
故村瀬守保さん撮影 中国戦線の写真集
侵略戦争肯定に反撃へ動かぬ証拠として!
平松 辰雄

 

          
     恐怖におののきながら部屋の奥に身を隠していた老婆と子どもたち(村瀬守保氏撮影)

 

 埼玉県川越市の故村瀬守保さんが、1937年から2年半、中国各地を一兵士として転戦したときに撮影した写真約850枚を地元の写真館の協力で編集したDVDが今年3月16日、日本中国友好協会常任理事会の席で、埼玉西部支部長の菊池大輔さんから本部会長の長尾光之さんに手渡されました。これには「平和をまもるために活用してほしい」というご子息の村瀬章さんの伝言が添えられました。

 

これまでも写真は


  村瀬さんは1909年、東京生まれ。2年余の兵役から解除された後は自動車の運転手などをし、戦後は埼玉設備工業を経営しながら川越民商会長を歴任されました。
  これまでも村瀬さんの写真は心ある人から注目され、書物に引用されたり展示に使われてきました。中国でも貴重な資料と評価され、南京大虐殺記念館や北京盧溝橋の抗日戦争記念館に展示されてきました。
  今年30回を数える「埼玉平和のための戦争展」でも、中国侵略戦争のコーナーで村瀬さんの写真が展示され、戦争展のイベントルームでは「村瀬さんの写真に学ぶ」コーナーが設けられ、75枚の写真をDVDで上映して紹介されました。

 

どうして写真が残ったか?


  DVDに収められている約850枚の写真の多くは、村瀬さんが所属した部隊の兵士個人の写真や集合写真です。部隊は中国各地を移動しましたが、休憩時間にそれぞれの兵士の元気な姿を見つけては撮影、焼き付けて兵士に渡し、それが家族に届けられたのです。出征後のわが子、わが夫の姿を見てどれほど家族は安心したことでしょうか。
  村瀬さん自身も後に結婚することになる恋人の宮下あやさんに手紙とともに写真を送り続けたのです。それをあやさんが大事に保管していたために、これらの写真が残っているのです。100歳を越えたあやさんは現在も健在です。

 

どんな写真か?


  村瀬さんは兵士の個人写真を撮っただけではなく、部隊兵士の日常生活、食事、入浴、理髪などの風景から軍隊の移動、行軍、自動車、船、列車による移動などをとらえています。
  さらに重大な歴史的事実をとらえています。「慰安所」「慰安所の前で順番を待つ兵士たち」。さらに、1937年冬の南京大虐殺。「揚子江川岸に流れ着いた死体」「死体を焼却した跡」「船で死体を処理する兵士」。これらの写真はたいへん有名です。

 

 

揚子江岸に、おびただしい死体が…(村瀬守保氏撮影)

 

歴史の証言


  名古屋市長が繰り返し「南京事件はなかった」と発言し、安倍首相が日本の「侵略」を認めず、「村山談話」、「河野談話」を否定しようとしている今日、事実を写した村瀬さんの写真は、日本軍の行なった筆舌に尽くせない中国人殺りくの歴史的事実の一端を雄弁に告発しています。
  これらの写真を見ていきますと、村瀬さんの思いがよく分かります。それは兵士仲間への温かい気持ちです。 一方、中国人の子どもに対する温かい眼差しもありますが、中国の人からすれば銃剣で武装した侵略者であることには変わりはなく、恐怖の表情で写っている写真もあります。
  村瀬さんは北京郊外の盧溝橋や、ハルビンのロシア人街など歴史や風物にも興味を寄せた写真も残しています。
  これらの写真の多くは、すでに『新版 私の従軍中国戦線』(日本機関紙出版センター)として生前、村瀬さんが出版され、現在も販売されています。
  この本の普及とともに、村瀬さんのこれらの写真が歴史の証言として広く活用されることが期待されます。(埼玉西部支部事務局長)

恐怖におののきながら部屋の奥に身を隠していた老婆と子どもたち(村瀬守保氏撮影)

揚子江岸に、おびただしい死体が…(村瀬守保氏撮影)

今後の活用について
  日本中国友好協会は、村瀬さんが抱いた平和への思いを受け継ぐとともに、南京をはじめとした中国戦線での加害の実態を克明に記録した貴重な写真を通して、侵略戦争の真実を多くの国民に伝えるため、今回提供いただいた写真を厳選して展示パネルにすることを決めました。
  展示パネル化の作業は、協会の将来を担う青年たちを中心に、学習を深めながら進められる予定です。展示パネルは2014年夏から活用を始める予定で、「平和のための戦争展」などでの積極的な活用が期待されています。

 

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