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日中友好新聞

2013年9月15日号1面
改革深化に向かう中国経済
リーコノミクスとは?
井手啓二

 

 

 中国経済は、構造転換期、転型期にあり、2桁前後の成長の時代が終了し、7〜8%台の成長がノーマルな時代に入ったようです。
  周知のように、中国の名目GDP規模は昨年末で日本経済の約1・4倍、アメリカの約5割強に達し、07年以後は世界経済成長の最大の牽引者であり、2020年までにアメリカのGDP規模を上回るとみられています。

 

中国報道の病理


 中国経済の減速化、それに伴う金融・地方財政危機などのリスクが最近話題を集めています。とくに日本では中国経済のバブル崩壊が近いとする誇張や経済困難の過大評価が目立ちます。
 これは、中国が社会主義に向かう方向を全く放棄し、一路資本主義化を進めているという現実離れした論評(国家資本主義論)と並ぶ、日本マスコミの病理現象でしょう。
  3月に成立した習・李政権の経済政策はリーコノミクスとよばれ、金融引き締め、景気刺激政策への消極姿勢、市場経済化推進と民生向上をめざす改革姿勢で際立っています。短期の成長より中長期の持続的成長の確保路線です。

 

成長減速化の背景

 

 投資が投資を呼び、大幅な輸出増が成長を牽引した時期は過去のものになろうとしています。日・米・欧の長期停滞予測があり、国内的にも「三高一低」(高投入・高消耗・高排出・低産出)の成長は、労働力・自然資源・土地など生産要素投入の壁、さらに環境悪化からみてもう持続できないというのが、転換・転型期あるいは成長率の低下の基本的要因です。
  3年目を迎えた成長減速化の特殊要因は繰り返し指摘されているとおり、08年末から2年余の4兆元財政出動、超金融緩和の後遺症です。この政策が展開された当時は、見事な国際金融危機対策として賞賛を浴びましたが、それは事の一面でした。
  他面では、ほとんどの産業部門での巨大な過剰生産能力の形成、地方財政債務の累積、シャドーバンキング危機のリスクをつくりだしました。新政権はまずもってこの負の遺産の処理からスタートしているようです。正の遺産はいうまでもなく医療・年金などの国民皆保険化、民生向上の推進路線です。

 

13年のリスクと対策

 

 今年上半期の実績は8月15日号の中国レーダー欄で述べていますが、昨年来13年ぶりの7%台成長という苦境が続いています。8月末現在では成長減速化が底を打ったのかどうかは不明です。
 国家発展改革委の分析では、2013年に直面しているのは、@過剰生産能力の矛盾の突出、A労働力、土地、資源など生産要素コストの持続的上昇、B創新能力不足問題の顕在化、C財政金融リスクの増大、にどう対処するかです(『走向2013:中国経済展望』2013年4月刊)。
 新政権は許認可権の整理・下放化、三公消費(公費接待・公用車・公費国外出張)の削減や庁舎建設の5年間禁止などの節約令の一方で、低中所得者の収入と消費の向上など格差是正、民生向上に力点を置く方向性を明確にしています。
  新政権は、先のA、Bのような中所得国のワナや壁を、@戸籍制度改革を伴う都市化の推進による新たな投資と消費の解放、A市場環境整備(改革の深化)による内生的成長能力の強化で乗り切ろうとしています。

 

画期的改革方針決定へ

 

 大規模な経済改革推進の動きは昨年の第18回党大会前後から強まってきており、今年11月開催予定の18期3中全会では、社会主義市場経済化路線を定めた1993年の14期3中全会に匹敵する画期的決定がなされるという期待・予測が盛んに出ています。
  中国の現在の経済制度は、「半市場経済・半統制経済の二重体制」、「典型的混合型経済制度」と呼ぶべき独特のものです。改革の深化は、質と効率を軸とする持続的成長への社会主義の前進を確実にもたらすでしょう。(長崎大学名誉教授)

 

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