日中友好新聞
2013年7月15日号1面
心も晴れ晴れ勇躍土俵へ
蒼国来さん 名古屋場所で再起期す
2010年の「日中友好新聞新年号」に登場した中国人力士の蒼国来さん(29歳)。記者とも顔なじみです。
7月7日からの名古屋場所を控えた多忙ななか、快く取材に応じてくれました。東京都中央区浜町の明治座脇にある荒汐部屋。稽古場での気さくなインタビューでした。(6月17日に取材)
名古屋場所直前、気さくにインタビューに応える蒼国来関
“真実はひとつ”の信念貫いて
2011年4月、大相撲の八百長事件で濡れ衣を着せられた。物証のないまま一方的に関与を認定され、引退勧告を受け解雇された。本人は一貫して関与を否定、引退届けも拒否し、不当解雇として東京地裁に提訴、同地裁で「証拠不十分」として解雇無効の判決を受け名誉を回復した。
しかし、2年間のブランクができた。その間の心境を聞くと「一番の支えは、自分は何もやっていない。真実はひとつという信念でした。そして自分の無罪を信じてくれた親方とおかみさん、内モンゴルで見守り続けてくれた両親の励ましでした」と目を潤ませた。
2万3千超す署名 ファンに深く感謝
そして続けます。「何といってもありがたかったのはファンの皆さんの声援・支援でした。相撲協会への土俵復帰を求める署名に応じた人は2万3000人を超えました。JR両国駅前での署名行動に駆けつけてくれたファンは数百人にのぼりました。有難かったです」と笑みがこぼれた。
「勝訴を知って北海道から駆けつけてくれたファンの方もいました。何とお礼を言っていいか」とも付け加えた。
ブランク克服し「いい相撲見せたい」
名古屋場所には事件以前の西前頭15枚目で復帰する。「2年のブランクは大変でしょう」と聞くと、「そうですね。でも相撲以外のトレーニングはやってきました。稽古を始めてからまだ数日、もちろん不安はありますが元気な相撲を見てもらいたい」と復帰にかける意気込みは強い。
「体もですが、心のケガを乗り越えた喜びが大きい」と、精神面の成長をうかがわせた。
「めざす関取は」と聞くと、「私は身長185センチ、体重135キロ。幕内の平均体重は161・5キロですから、決して大きくはありません。同じ軽量の先代若乃花関が好きです」とキッパリ。
若い頃、レスリングやモンゴル相撲で鍛えた。「投げを得意にする相撲が取りたい」と、復帰場所への意欲を見せた。
相撲通じ日中友好に貢献を
「中国のファンに一言」と向けると、「中国の相撲人気は高くありませんが、上海には相撲ファンがいます。今度の事件をたくさんの中国メディアが取り上げてくれた。相撲への関心が高まったのでは」と、事件を振り返る。
最後に「相撲を通じて日中友好に貢献できれば…」と締めくくってくれた。
(取材=大田宣也、撮影=押見真帆)
蒼国来栄吉さんプロフィール
1984年1月生まれ、中国内モンゴル自治区赤峰市出身。本名は恩和〓※1布新。
中国出身力士として初めて入幕を果たした。最高位は西前頭13枚目。得意技は右四つ、寄り、投げ。大相撲八百長問題で2011年4月以来、2年間のブランクがあったが、今年7月の名古屋場所から現役力士として復帰。
荒汐部屋ホームページ http://arashio.net/
蒼国来(荒汐部屋)公式ホームページ http://sokokurai.net/
※1…くにがまえに冬。図の簡体字