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日中友好新聞

2013年6月5日号1面
強い信頼、深い友情育む
日中韓学生が共同学習と生活
「キャンパスアジア」プログラム 
立命館大学では

 現在、「キャンパスアジア」プログラムが実施されているのをご存知だろうか。日本・中国・韓国の間にはさまざまな矛盾が存在しているが、3国の学生が集団学習・共同生活を進めていく中で、未来志向で問題を解決できる人材を育成していく試みだ。立命館大学文学部の取り組みを紹介しよう。

 

28人が京都の日本家屋で

 

写真1 日本中国友好協会
日本語でディスカッション

 ゴールデンウィークが終わると京都は1年で最も過ごしやすい季節を迎える。その市内の一角にある日本家屋で、中国と韓国、そして日本の大学生たちが共同生活を開始した。
 彼らは、立命館大学文学部、中国広州市にある広東外語外貿大学、韓国釜山市にある東西大学校からやってきた「キャンパスアジア」プログラムの学生たち28人。
 「キャンパスアジア」プログラムとは、文部科学省が推し進める「平成23年度大学の世界展開力強化事業」のうちの、日本と中国、韓国の大学が連携して、新しい高等国際教育プログラムを開発する「日中韓のトライアングル交流事業」のこと。日本では東京大学や一橋大学など10の大学が選ばれたが、私立大学としては唯一、立命館大学文学部が、中国と韓国の上記両校と連携して運営を行なっている。

 

次世代リーダーの育成へ

 

 10校のそれぞれのプログラムは、内容や育成する人材目標が異なり、立命館大学では「東アジアの次世代人文学リーダーの育成」を掲げている。その特徴は主に3つある。
 まず、学部生が対象で、普通の大学生が4年間でプログラムを修了し、卒業ができること。
 2つめは、3カ国の学生が一緒に3カ国の大学キャンパスをめぐる「移動キャンパス」。学生たちは1年間に3つの大学を10週間ずつめぐり、それを2年間行なう。まさに同じ教室で学び、同じ宿舎で暮らし、それぞれの国での互いの学習、生活を助け合うことで、強い信頼関係と深い友情を育んでゆく。
 3つめは、現地で、現地のことを、現地の言葉で学ぶという人文学。当然、母語以外の2カ国語の日常会話ができるようになり、現地で社会・歴史・文化などを学び、机上の論ではない、日常的で生きた学問を身につけてゆく。
 これまでの日本や東アジアに例を見ない、欧州のエラスムスに比する新しい教育プログラムだ。

 

2月に広東でスタート

 

 立命館大学では2012年度から本格始動し、中国語や朝鮮語の特訓などを経て、昨年度の1・2回生からメンバー8人が選ばれた。そして本年2月17日に広東外大で「移動キャンパス」の開校式があり、1学期がスタートした。
 広東外大では東方言語学院院長の陳多友教授がプログラム責任者となり、日本語と朝鮮語学科を中心として、国際部や留学生教育センターがサポートする。中国語の授業のほか、中国文化体験、中国社会文化研究などの演習授業があり、在広州日本国総領事館や合弁企業の広汽トヨタへの訪問、また世界遺産のある開平市でフィールドワークを行なった。
 広州へ引率教員として派遣された廣澤裕介准教授は「ほとんどの日本人学生にとって初めての海外長期生活でしたが、すっかりたくましく、学習以外の面でも積極性やリーダーシップを発揮するようになった」と語っている。

 

3カ国語が入り乱れて

 

 5月7日からは立命館大での2学期が始まり、宿舎が市内にあるため、ふだんの生活や大学への往復すら学びの場となっている。ゴミの分別方法、由緒ある地名、バスの乗り方、街の人の京ことばなど、中国、韓国の学生には自国とは違う、教科書やテレビ、インターネットも伝えない異文化である。
 宿舎の中でも日々新鮮な出来事があり、大家さん主催の歓迎会、週1度のフロアミーティング、各国歴史授業の相互学習サポート、たこ焼き女子会など、3カ国語が入り乱れ、学生たちの共同生活・共同学習は続く。
 廣澤氏はこうも言う。「東アジア3国間の複雑な問題が取沙汰されています。しかし学生たちにとっての東アジアとは、国際社会などという大げさなものではなく、まずは共に暮らす仲間、共に学ぶメンバーのことなのです。彼らのような個人レベルで深くつながる関係がより多くなることが、新しい東アジアをつくることになり、このプログラムがその展望台になればと考えています」。
 立命館大での2学期は8月上旬まで続き、9月には釜山の東西大学校で3学期が始まる。

 

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