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日中友好新聞

2013年4月5日号1面
習近平新指導部スタート
所得分配改革にどこまで
松木研介

 例年よりひときわ注目度が高かった中国の全国人民代表大会(全人代=国会に相当)が3月5〜17日に開かれました。
 「注目」というのは、昨年11月の中国共産党第18回大会を受けての政府方針の審議であり、指導部の大幅交代もあったからです。

 

「中国の夢」実現への道は

 

写真1 日本中国友好協会
北京の人民大会堂で行われた
全人代の閉会式=3月17日

 最終日の習近平新国家主席のあいさつは、党大会以来最初の公式演説といえるものでした。キーワードは「中華民族の偉大な復興という中国の夢」。
 習氏は党大会で総書記に選ばれた後の会見で「中国の夢の実現を」と訴え。11月29日に国家博物館を参観したときのスピーチで「中華民族の偉大な復興という中国の夢」と定義しました。
 ではいつをもって「実現」か。これはまだ公式文書では規定づけられていません。
 いくつか考えられる指標はあります。@中国のGDP(国内総生産)がアメリカを抜く日 A2020年のGDPが2010年の2倍になり、「小康(まずますの生活ができる)社会」が全面達成されたという時点、です。
 ただ@はあと数年で達成とも言われており、Aも含めて「中華民族の偉大な復興」というには少しスケールが小さい気がします。
 一部には、「中国が世界のGDPの3分の1を占めていた唐時代のようになることが夢の達成」という論者もいます。今後「偉大な復興」をめぐる国内外の論議がますます盛んになるでしょう。

 

「大気汚染」も焦点に

 

 全人代の議論の土台となったのが、開幕日の温家宝首相の政府活動報告でした。
 報告はこの数年来のものとは違っていました。@第18回党大会決定の内容を政府方針として改めて打ち出した A経済問題にかなり重点を置いた B外交・軍事などの叙述は簡潔になった(内容はかなり強気だが)などが特徴といえます。
 経済問題で、第18回党大会の方針を色濃く反映した点は、一般的な「格差解消」方針でなく、「所得分配制度」改革の重視です。報告は、これを「社会主義市場経済の重要な礎石」と位置づけ、「社会の公正につながる税制の形成」などを打ち出しています。
 所得分配問題を格差解消にとどめず社会主義前進の課題にすえたことで、今後の具体的施策が注目されます。
 報告で明確な言及はなかったものの、会期中の関心事の一つに「大気汚染」問題がありました。ガソリンの品質改良、工場の煤煙規制など、政治・経済に直結する課題です。
 3月16日に環境・資源保護委員会の信任投票がありました。反対・棄権をあわせた批判票は33%に達し、議場にはオーという声がこだましました。大会代表と国民のこの分野への期待と不満が凝縮したような場面でした。
 なお、「予算」「検察・裁判所報告」への批判票も20%を超えました。浪費、汚職への厳しい批判の反映といえます。

 

「平和発展政策」に注目

 

写真2 日中友好協会
全人代で、握手する李克強首相
(中央左)と習近平国家主席
=3月15日

 習主席演説とともに、最終日のハイライトは李克強新首相の記者会見でした。私が注目した一つは、汚職・腐敗問題での「役人になったら、金持ちになる思いは絶て」などを含む大胆な言い方でした。「その言やよし。あとは実行と結果だ」という思いで聞きました。
 もう一点は、「中国の平和発展政策と国家主権堅持は両立する」との言明です。これについては今後、世界とアジアの厳しい目が注がれていくでしょう。尖閣問題ひとつとっても、100年を超える日本の実効支配があるのに、領海・領空侵犯を繰り返していては「平和発展」の名が泣きます。
 なお、李首相への質問で、日本の記者は3年連続で指名されませんでした。「尖閣問題」が必ず出るので、そのさい「中国固有の領土」と強く突っぱねるだけで済むのか、「平和発展」の理念どおり、協議・交渉路線に門戸を開く姿勢を見せるのか、中国指導部としても決断しにくかったのかもしれません。
 日中双方がわだかまりを捨て「外交協議入り」を決断すべきときではないでしょうか。
 (ジャーナリスト)

 

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