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日中友好新聞

2013年1月25日号1面
どう動く今年の中国経済
中国の特色をもつ社会主義とは
井手啓二

 新しい年を迎え、打ち続く世界経済の低迷のなか中国経済の行く手に注目が集まっています。昨年11月に発足した習近平指導部は早速、12月には「中央経済工作会議」を主宰し、2013年の方針を決定しました。こうした事情について、中国経済専門家の井手啓二さんに解説をお願いしました。(編集部)

 

 2012年の中国は成長減速化に悩まされましたが、年末に下げ止まり、通年では7.7%前後の成長(前年は9.3%)となりました。2311億ドルの巨額の貿易黒字も維持し、年末外貨準備高は3兆3100億ドルです。
 しかし、景気反転は力強いものではありません。過剰生産能力が存在し、また経済発展方式の転換がそれほど進んでいないためです。それでも13年の成長予測は8%台。
 21世紀に入ってからの米・日・欧の先進国の長期低迷のなかでは、中国の実績は抜群で、10年間での所得倍増計画も実施中です。交通・労災死亡事故数でも、かつてのアメリカ、日本のピークに達することなく、04年以降減少に向かっています。
 このように、中国は「後発性の利益」を極めてうまく生かしています。

 

社会主義市場経済化・混合経済化が成功の原因

 

写真1 日本中国友好協会

中国東北地方の
工場で働く女性たち

 昨年11月の中国共産党第18回大会では、「中国の特色をもつ社会主義の道、理論体系・制度」が繰り返し強調されました。社会主義市場経済化・混合経済化の理論と制度がその根幹をなします。
 中国の躍進はこれにより達成され、それは21世紀型社会主義の大胆な実験としても極めて注目すべきことです。
 世界大恐慌(1929年)に続く時代にソ連の躍進が脚光を浴びました。時代が転変し、過去6年、社会主義をめざす中国がアメリカに替わる世界経済の最大の牽引車として話題をさらっています。
 東欧生まれの社会主義市場経済理論が、世界で初めて中国で開花し、大きな成果を収めてきました。中国が自信を深めているのは納得できます。
 しかし問題と課題も山ほど抱えており、土地・金融・財政改革など胸突き8丁の難しい地点にきています。中国の成長は「三高一低」(高投資・高消耗・高排出・低産出)の非効率なものです。持続的成長のためには、効率と質の向上を軸としたインテンシブな経済発展に転換しなければなりません。
 これに成功した社会主義国はありません。これができれば、中国経済は磐石となり、今は途半ばにある社会主義市場経済化の達成を意味します。

 

共同富裕は社会主義制度の優位性

 

写真2 日本中国友好協会
中国東北地方の絹糸工場

 中国には先進資本主義国のように、国民の賃金・所得を引き下げる体制的理由はなく、成長の果実を国民に配分することができます。共同富裕(これが実現すると資本主義は存続できません)は、別に夢ではなく、社会主義の優位性のはずですが、現実になった事例はなく、中国はその最初の国になる可能性もあります。
 それには市場経済化を進め、質と効率の向上を可能にする内生的メカニズムを構築すること、そして新しい産業・企業・労働文化を形成することが必要で、それは政治改革とも連動するだけに難題です。

 

改革の新たな胎動

 

 中国は今、改革に全力をあげようとしています。市場の役割と範囲の拡大、政府と市場の関係の改善を打ち出した第18回党大会に続き、13年の基本経済方針を決定した昨12月中旬の中央経済工作会議は、「安定成長、発展方式の転換、構造調整の鍵は、経済体制改革の全面深化にある」、「改革の最高指導部における設計と総体規画の研究を深め、改革の総体方案、ロードマップ、タイムテーブルを明確に提出する」として改革への決意を強調しました。今後の改革にかなり期待してよさそうです。
 (長崎大学名誉教授)

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