日中友好新聞
2012年12月5日号1面
13億人民の生活と世界経済に直結
中国共産党18回大会
指導部交代で国づくり前進めざす
大林樹智
中国共産党は11月8日から14日まで北京で第18回大会を開催。大会で胡錦濤総書記が行なった中央委員会報告の内容と党規約の改定で「指導思想」に加えられた「科学的発展観」は、習近平氏ら新指導部の今後の役割を知るうえでのカギとなる。
所得倍増や民主制度整備の任務
第18回大会の開催を報じる人民日報
(11月9日付)
胡氏の報告は、自身の総書記任期中の10年間を振り返り、人民生活の著しい向上や「小康社会」(おおむねゆとりある社会)の全面的完成への強固な土台を築いたことなどの成果を誇った。
四川大震災(08年)などの災害を乗り越え、名目GDP(国内総生産)で日本を抜き世界第2の経済大国となった中国経済の発展ぶりが反映されている。
そのうえで報告は、中国の発展は依然「重要な戦略的なチャンスの時期」にあると強調。2020年までに「小康社会」を全面的に完成させるべきだとして、GDPと都市・農村住民の平均収入を対2010年比で倍増させる目標を打ち出した。中国版「所得倍増計画」ともいうべきものだ。
また、基層(=末端、草の根)民主制度の整備、法による国家統治の全面的推進などを今後の重要任務として位置づけた。
「科学的発展観」の背景に人民の不満
党規約改正によって、従来「主要方針」の一つにすぎなかった「科学的発展観」が、「マルクス・レーニン主義」「毛沢東思想」、「搶ャ平理論」「三つの代表」の重要思想と並ぶ「党が長期にわたり堅持しなければならない指導思想」「行動指針」に格上げされた。
「科学的発展観」とは、「人間」の存在を根本的価値判断の基準として位置づけ、経済成長にともなって噴出するさまざまな問題―個人、家庭、地方間の経済格差や公害などの環境問題に対応するため胡氏が総書記就任の翌年、国家主席就任の年(03年)の7月に打ち出した理論だ。
「科学的発展観」は、胡氏の「和諧社会」(調和のとれた社会)論と同様、過度な格差や貧困、党幹部や公務員の腐敗などを抑制し、社会の不安や大衆の不満を抑えることで、中国社会の「持続可能な発展」を保障しようとする意図がある。
それが「指導思想」「行動指針」として位置づけられたことは、まさにその理論を必要とする問題が中国社会でいっそう顕在化していることの裏づけだ。
深刻な汚職・腐敗問題
とくに汚職問題は深刻だ。温家宝首相は今年3月の全国人民代表大会で行なった政府活動報告のなかで、「汚職と職務怠慢」の問題をあげ、「腐敗の撲滅、予防」に本格的に取り組むと表明。
「幹部が政府調達や入札、土地使用権競売などの経済活動に介入することを断固禁じる」と強調した。
実際、2011年に規律違反で処分された中央、地方の幹部は4843人に達し、公務員の重大な汚職事件(贈収賄・横領など)は3万2567件に上り、4万4506人が摘発されている。
前大会以降、政治局員だった薄熙来前重慶市党委員会書記や劉志軍鉄道相が汚職・腐敗事件で党籍を剥奪され、13億人民を統治し、8260万人の党員を指導する党中央の権威と信頼は大きく損なわれた。
新指導部に託された課題と目標
中国の新指導部が真っ先に直面するのは、米国や日本など諸外国で行き詰まる新自由主義的経済と、それらがもたらす中国の経済成長の減速や雇用の悪化だろう。
そのような国外由来の困難を克服し、さらには国内の経済格差、党幹部や公務員の汚職・腐敗などの問題を解決し、公正で民主的な社会を発展させなければならない。そのうえで2020年までの「小康社会」の全面的完成や庶民の所得倍増を達成するのは相当に困難な任務だ。
空母の保持や海軍力強化など、軍事的な力を重視する中国の外交・安全保障政策への懸念が世界では高まっている。前期指導部から引き継いだ“平和発展の道”など内外政策の成果を生かし「持続可能な発展」を維持できるかどうかは、13億人民の生活の安定と発展、引いては世界全体の平和や経済に関わる問題だ。党中央軍事委員会主席の大権も同時に引き継いだ習氏率いる新指導部の英知と真価が大いに問われている。
(ジャーナリスト)