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日中友好新聞

2012年6月5日号1面
高い創作水準目の当たりに
第44回全国きりえコンクール 前田尋

 4月に行なわれた日中友好協会第44回全国きりえコンクールの特徴や審査結果、長年にわたる協会きりえ活動の歴史や成果などについて、きりえ委員長の前田尋さんに聞きました。

 

 第44回全国きりえコンクールは、ジュニアの部に11人=13点、大人の部に9府県から48人=83点の出品があり、4月末、日中友好協会本部で、きりえ委員会による審査会が行われました。
 大人の部の作品は、東日本大震災をテーマにしたものやヒロシマを描いたもの、身近な暮らしや祭りを主題とするもの、懐かしい風景、お年寄りや孫との触れ合いなど、生活の場からの作品が多くを占めました。

 

協会の歴史と共に発展

 

写真1 日本中国友好協会

最優秀作「鎮守さま」 岸本幾代

 全国きりえコンクールの歴史を振り返ってみますと、1965年、東京都連合会文化委員会の中に発足した「中国民芸品友の会」が、「民芸きりがみ研究会」という名で、中国剪紙の紹介や講習会を開いていました。展示会なども開いて次第に愛好者を増やしていた中、67年に、現在の日中友好新聞紙上コンクールという形で始まりました。
 中国剪紙の模刻から創作作品へと展開していたきり紙は、素朴な作品ではありましたが、くっきりと力強い、明解な形は、それまでの絵画にない美しい造形として驚きと共感をもって迎えられたのです。
 回を追うごとに出品者は増え、最初は読者や会員が投票で優秀作品を選んでいたのが、第5回になって審査員による審査制となり、第6回では、吉井忠、久米宏一氏ら洋画の専門家を審査員に迎え、選考されるようになりました。以後、滝平二郎氏や加藤義明氏らのきりえ画家も加わってゆきます。
 第6回の74年には、初めて入選作品を中心とした中央展が東京・銀座で開かれ、翌年には日中友好協会の全国組織が中心となって、各地のきりえサークルと協力して、20都道府県31カ所で全国巡回展が開催されました。
 現在では、きりえ委員会による審査や限られた地域での巡回展などの変化はあっても、多くのきりえ作者が応募する登竜門としての役割を果たしています。

 

絶妙の構成−最優秀作

 

写真2 日本中国友好協会

会長賞「合格できますように!」 藤井恵美子

 今年の審査では、入選43点、佳作6点、優秀作12点、日中友好協会会長賞1点、最優秀作1点となりましたが、特に優秀作以上の14点の作品を一同に並べて見た時、やがて50年にもなる日中友好協会でのきりえ創作活動の高い成果を目の当たりにする思いでした。
 最優秀作は、岸本幾代さんの「鎮守さま」。画面を2分する構図は、左に建築と提灯、右に樹木と中景の人物群と絶妙の構成で、限定した彩色も効果的です。
 会長賞の藤井恵美子さん「合格できますように!」。天満宮の牛の銅像に祈願する学生と母親、梅花も配して、大胆な白黒作品によだれかけの赤が鮮明です。
 優秀作「長柄橋のたもとで」での思い切った構図の大胆な表現、東日本大震災の復興を願う「願いをこめて」の構成の妙、「そうめん作り」の働く婦人像、工夫したそうめんの表現と動き、「藤の咲く道」の藤の美しい表現や見上げる人たちへの作者のまなざし、「小さなプレゼント」の老婦人と目を合わせる幼な子との物語などなど、その他の作品も含めて優秀作のすべてが、今年は、きりえの基本である白黒のくっきりと描かれた作品となりました。
 黒い線で縁取られたのがきりえとは言え、それは決して線描に終わってはならないのです。線が生きるためには、ただの輪郭線にしない工夫が必要なのですが、今回の優秀作は、うまく生かされていると思う作品ばかりでした。

 

今年中国で初のきりえ展

 

写真3 日中友好協会
和やかな雰囲気の中で行われた
審査会

 今年8月に中国・江蘇省で、これまでの協会のコンクール優秀作品を中心とした「日中交流きりえ展」(仮称)が開催されることになりました。
 剪紙の国で、いわば、日本のきりえの母なる国で、私たちの作品がどのように受け取られるか、大変興味深いところです。

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