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日中友好新聞

2012年3月5日号1面
「戦さ世」だけはイヤ!
中国残留婦人テーマに一人芝居
神田さち子さん『帰ってきたおばあさん』

 中国「残留婦人」の半生を描いた舞台「帰ってきたおばあさん」(原作=良永勢伊子、演出・上演台本=杉本義法)が3月5日、東京・浅草公会堂ホールで、5月には中国北京首都劇場や大連市芸術学校などで公演が予定されています。
 引き揚げの経験、中国「残留婦人」たちとの出会い、舞台にかける思い、平和への願いなどを主演の神田さち子さんに聞きました。

 

辛い記憶なくて良かった

 

写真1

「残留婦人」鈴木春代を演じる
神田さち子さん

 中国撫順生まれの神田さんは、1歳7カ月で終戦を迎え、翌1946年(昭和21年)7月に葫蘆島から両親と兄の4人で舞鶴に引き揚げました。
 「終戦直後、現地人が暴動を起こし、日本人の仲間が殺されたと聞いています。引き揚げ船では毎日水葬が行われ、遺体を海にドボーンドボーンと落とす音が船底に響き、その傍らで固くて臭い雑穀粉を狂ったように取り合い、食べている私たち兄妹の姿に母は涙したそうです。でも私にはその時の記憶が何一つありません。記憶がなくて良かったと思っています」

 

「残留婦人」との出会い

 

 「原作者の良永勢伊子さんに誘われ、1996年9月に一時帰国中の『残留婦人』の数人とお会いしました。しわがいっぱいの白いブラウスに黒のズボンという質素な身なり。彼女たちは多くを語りません。皆、無表情なので驚きました」
 帰り際、思い切って70代くらいの小柄な婦人に「何かできることはありませんか?」と声をかけると、「もう何も言うことはありません。ただ私たちのような者がまだ中国にたくさんいることだけは忘れないでください」と言われ、ハッとしたそうです。
 「あの後ろ姿は私の母だったかもしれない。『マーマ』と泣く孤児は私の姿なのではなかったのか」と。この時に、「忘れない。この人たちのことを多くの人たちに伝えよう」と、決心しました。

 

「毎回初演」をモットーに

 

写真2 日本中国友好協会

08年ハルビン龍江劇場にて公演

 初演は1996年11月の和歌山。ある女性民主団体の会議室に平台を並べ、照明や音響設備がほとんどない簡素な舞台でした。「一人芝居に挑むプレッシャーでげっそり」の毎日。その後も、「毎回初演」をモットーに全国各地のホールや学校を回りました。
 神田さんは「理不尽な戦争で運命を狂わされた1人の『残留婦人』をモデルにして生まれた“鈴木春代”の人生を演じることで、今まで見えていなかった世界や、女としての生き様を改めて問い直すきっかけになった」と、語ります。
 アンケートには「中国残留婦人について、これまであまり知識がありませんでした。改めて戦争の悲惨さについて考えさせられました」「『戦争は弱いものが必ず犠牲になるのです』の一言が身にしみました」「私は帰国者2世です。公演を拝見致しまして、何度も涙を流しました」など、多数の感想が寄せられました。
 中国公演は2008年に中国黒龍江省ハルビン、10年のハルビンの吉林省長春の3回。
 ハルビンでは300人が入る客席が満席に。学生のほかに「残留孤児」や養父母も観劇しました。「公演中、2列目の客の姿が見えません。泣き崩れていたんです。字幕は一部分だけ。日本語は分からないはずなのに、伝わるんですね。公演後の交流会では、日本語学科の学生から直接『感動した』など感想を聞くことができました」。

 

5月に再び中国で公演

 

写真3 日本中国友好協会

北京首都劇場(人芸)前で

 「舞台の仕上げを首都北京でやりたい」。たくさんの好意や協力で、5月15日から20日にかけて大連市芸術学校を皮切りに大連大学、北京外大、中国北京首都劇場での公演が決定。中国への観劇ツアーも実施します。
 「中国公演の経費は自己負担。苦心して協賛金を集めていますが、中国の観劇者を間近で感じられるのです。今からワクワク!」と目を輝かせます。
 3月5日には中国帰国者を招待して東京・浅草公会堂ホールで174回目の公演が中国帰国者支援・交流センター主催で行なわれます。
 「ぜひ若い人たちに見てもらいたい。夫婦や家族で、戦争とは何だったのか。かけがえのない命の尊さを感じてもらえると嬉しい」と、意気込みを語りました。(押)

 

 神田さち子さんプロフィール
 1944年中国撫順市生まれ。西南学院大学卒業。「神田さち子語りの会」主宰。奈良・東京で後進を育てる傍ら、「車いすの語り部」との二人三脚の歩みは有名。その体験記が文部大臣賞を受賞(1982年)。
 代表作に一人芝居「筑後川と源じいしゃん」(1994年)、語り芝居「帰ってきたおばあさん」(第55回文化庁芸術祭参加作品)は1996年初演より全国各地で絶賛上演中。
 著書に『あなたに伝えたくて』『心のはらっぱ−語り愛つむぐ』『奈良のむかし話』などがある。
 〔神田さち子語りの会〕
 住所=〒182-0033 調布市富士見町2-13-5 A-316 TEL/FAX:042-480-9369
 E-mail:sachiko1189※gmail.com(※を@に変換)
 公式サイト=http://www.tr3.net/sachiko/

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