日中友好新聞
2011年11月5日号1面
名もなき人びとのたたかいと愛を描く
壮大、悲痛、感動の映画叙事詩 中国の夜明け「1911」
石子順
辛亥革命から今年10月10日でちょうど100周年。辛亥革命を題材に制作された映画「1911」が11月5日からいよいよ日本を含め全世界で同時公開されます。この映画の概要について映画評論家の石子順さんに解説してもらいました。(編集部)
1911年12月29日、孫文が臨時大統領に選出された。
(前列中央・孫文、右・黄興)
『1911』ジャッキー・チェン出演100作目記念作品
11/5(土)より丸の内TOEI他にて全国ロードショー!
(c)2011 JACKIE CHAN INTERNATIONAL CINEMA CULTURAL HOLDINGS
LIMITED JACKIE & JJ PRODUCTIONS LIMITED ALL Rights Reserved.
歴史が動く時
268年つづいた清王朝を倒し、アジアで最初の共和国を樹立した辛亥革命から100年。中国の歴史が動く時とその後の共和制確立のための闘いを史実をもとに描く壮大な大作である。総監督は映画出演100本目になるジャッキー・チェンで、革命軍司令官・黄興を力演している。
1907年、女性革命家・秋瑾が清朝に処刑されるところから始まる。
これにつづいて孫文を中心にした中国同盟会は蜂起を繰り返して破れてきた。1911年4月26日、孫文がサンフランシスコで「華僑は革命の母である」と訴えている時、広州で黄興たちが総督府に攻撃をかけるがまた敗北する。
だが10月10日、武昌蜂起が成功し、革命の火は全国に広がっていく―。
革命・反革命群像
戦場での黄興(ジャッキー・チェン)と
徐宗漢(李冰冰)
(c)2011 JACKIE CHAN INTERNATIONAL CINEMA CULTURAL HOLDINGS LIMITED JACKIE & JJ PRODUCTIONS LIMITED ALL Rights Reserved.
亡命先で活動する孫文(ウインストン・チャオ)と国内で戦う黄興の同志的友情を芯にして、黄興を支える女性革命家・徐宗漢(李冰冰)、革命の成果を強奪する袁世凱(孫淳)らが登場する。
これは名のある人びとを描くだけではなく、名もない無数の青年たちの革命群像映画でもある。広州蜂起で処刑される林覚民や、武昌蜂起の発端をつくった張振武たちが、明日の中国を夢見て戦っていくさまは、見るものの胸を熱くする。
ジャッキー・チェンは、この映画は「与」という文字で表されるといった。革命に命を与えた犠牲者たちを描いたということだ。孫文が臨時大統領に選ばれた時、中国の歴史に初めての投票が行われたという。この場面に感動する。
袁世凱が権力ほしさに、皇太后に革命の恐怖を奏上して退位を迫るシーンもある。旧勢力は権力にしがみつく。それを早く倒壊させるためにとった孫文の悲痛な決意。
愛の映画叙事詩
孫文は亡命先で革命を訴えた
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これは愛の叙事詩である。黄興と徐宗漢の戦火の中で強くなる愛情に焦点が当てられている。それとともに孫文をはじめとして、国民が主人公になる時代の到来のため闘った人びとの、同志への、国への、民衆への、新しい生命への愛を貫くさまをとらえていく。
映画の力というものをあらためて感じさせる。辛亥革命という大変革で始皇帝以来の皇帝政治が倒れていく瞬間を目撃させる。革命成功後の中国の命運をどう決めていくか、その模索と暗闘、謀略を映画は証言する。孫文、黄興など革命側の人物はもとより、皇太后や袁世凱など反対側の人間たちの考えや行動も見せて目の前で歴史が変わる。
中国の夜明けを描いて中国映画の大きな前進を示した。
来日したジャッキー・チェンは言った
来日記者会見(10月21日)で語る
ジャッキー・チェン
100本目で初めてすべて真実にもとづいた人物を演じた。これまでの映画とは違うものを出すことができました。黄興は私と似ているところが多いが、ただアクションシーンがないのには困ったけれど(笑)―。
辛亥革命がなければ新中国はなかった。未来のために命を犠牲にした彼らがいたからぼくらがここにいる。そのことを次の世代に伝えたい。自分は映画が出来たときにいつもこれは子孫にみせて大丈夫かと思ってきた。これはまさにそういう映画です。子どもをつれて見てほしい。世の中を変えるために決してあきらめないというメッセージを日本の人々に汲みとっていただきたいのです。