日中友好新聞
2011年10月15日号1面
若い力で「緑の長城」の実現を!
樹木医の目線で見た中国の砂漠化緑化
岡野昌明
今年も、地球温暖化の影響と見られる異常気象が続いています。「中国の砂漠化」も無関係ではありません。樹木医の岡野昌明さんに「中国の砂漠化緑化」について聞きました。
日本と中国の植物は昔から兄弟
酒泉近くの農地防護林オアシス地形で
ポプラの生長も良好
日本と中国にある植物には共通性があり、植物学では「日華区系」の植物と呼ばれています。
約40万年前、日本と中国は地続きで同じ植物がありました。後に海峡が分断され、海底では毎日植物葬が行なわれたでしょう。しかし共通性質をもった植物が多く残りました。
現在、両国の樹種は日本約4000種、中国1万2000種と推定されています。2000年に初めて安徽省の黄山に登り、ミズキなど福岡と同じ樹種30種と黄山カシなど中国種が仲良く暮らしているのを見て感激しました。
中国の砂漠化の緑化はアジア共通のテーマ
黄山の植物 福岡の樹木と同じ種類が多い
(筆者)
中国の緑化では、「砂漠」と「砂漠化」が混同されている場合が多いのです。「砂漠」は年間雨量がほとんどなく、砂ばかりで草木は育ちません。例えばゴビ砂漠などで、緑化の対象外です。
昔、草原や森がありましたが、現在は表面植生が禿げて荒地になり、砂の山(砂丘)をつくり、砂漠に似た「砂漠化」した土地が緑化の対象地です。年間雨量は大体400ミリあるところです。
中国の砂漠化面積(93年まで)は約35万平方キロで日本の国土面積に相当します。毎年2100平方キロ(東京都に匹敵)が新たに砂漠化が進行しているとされています。
砂漠化は紀元前から黄土地帯ではありましたが、近年では清朝末期から日中戦争までの戦争被害と、「文化大革命」期の過開墾と過放牧が原因です。
このことは、黄砂(砂塵嵐ともいう)の大きな被害の発生頻度が、19世紀の人口増大=開墾の増大と一致していることと関連しています。
「緑の長城」で砂漠化を封じ込める
黄土高原の油松の大植林地穴を
掘って植える穴状整地法
砂漠化して荒れた土地でも年間雨量が300-400ミリあれば樹木は育ちます。この400ミリの降雨量の地域を連ねて緑化する「三北防風林システム建設プロジェクト」が1978年から進行中です。新疆ウイグル自治区から黒竜江省まで延長約7000キロに及びます。
万里の長城に例えて「緑の長城」と呼ばれています。
06年にシルクロードと西安に行き、草方格(麦わらを1メートル四方の格子状に埋め込み防砂するもの)や防護林を見ました。植栽効果は素晴らしいものばかりでした。
所見は五つありますが、二つに絞ってみました。一つは、共通して同一樹種の大面積植栽で気象害、病虫害大発生の危険があること。もう一つは、ニセアカシアと松類が混植されていること。ニセアカシアは土の富栄養化で、松に悪い影響が出るとの研究者の指摘があり、いかがなものかと懸念しています。
中国の砂漠化の緑化と日中友好
日本は戦前、中国へ15年間も侵略し、山野の自然環境を破壊しました。福島の放射能汚染の解決の課題と、中国の砂漠化の解決はアジアの共通の課題です。
中国緑化の道筋として、青年が参加しやすい条件をつくることです。いま青年は雇用など劣悪な社会条件の下にあります。
日中友好協会も、仮称「緑の長城」カンパとして「1口200円以上」の募金を募るなど、青年への旅費(日本青年団協議会などへの植林参加を含む)の一部助成などが考えられないだろうか。青年の参加が日中友好の前進と協会の組織強化にもつながると思うが、いかがであろうか。(樹木医)
岡野昌明 プロフィール
1934年、鳥取市で生まれる。1956年〜92年、福岡県庁水産林務部に勤務。1991年、樹木医資格取得。福岡市舞鶴公園の桜500本の診療、以後天然記念物など200件を診断。
現在、日本中国友好協会福岡県連常任理事。同筑紫支部副支部長。協会福岡支部サークル「自然を楽しむ会」会長。
樹木医とは・・・
樹木が被害(病害虫や気象害、人や車の害)を受けた時に診察を行う人。従来のカンと経験のみに頼るのではなくて、「科学性と民主公開」を特に重視する。住民の民主的な街づくりの緑化もテーマ。資格は日本緑化センター(国の認定機関)が毎年応募して認定する。農林業の経験年数7年以上が必要。樹木医は、全国で約1900人いる。 |