日中友好新聞
2011年8月15日号1面
瀋陽「九一八歴史博物館」で開く
中国各地で日本の八一五反戦漫画展
平和の訴えに「感動」広がる
いま、中国瀋陽市の「九一八歴史博物館」別館で、九一八事変勃発80周年を記念して日本の漫画家の「八一五漫画展」が開かれている。2009年の南京大虐殺記念館、2010年の北京抗日戦争記念館での開催に続いて中国で3回目の展示となる。(石子順)
いよいよ瀋陽で
日本の漫画家は瀋陽の漫画家と交流した
右から横山孝雄、石子順、森田拳次、ちばてつや、
山内ジョージ、中国人漫画家[劉克軍、墨恋、張東雨]、
小野耕世、ウノ・カマキリの各氏(撮影:石河幸恵)
1931年9月18日、日本軍の列車爆破、東北地方での戦闘開始、“満州国”のでっちあげ、日中戦争勃発のきっかけとなったその瀋陽、その記念館で、日本の8月15日の漫画展が開かれる意義は大きい。
7月10日の開幕式には、瀋陽市政府代表と各界代表、瀋陽の漫画家、瀋陽日本総領事館松井盛雄総領事など多数列席。日本からは石川好氏、海老名香葉子さんなどに、かつて瀋陽にいたことのあるちばてつや、森田拳次、筆者の3人を含めて10人の漫画家、評論家が参加した。
ちばてつや氏が「日本が戦争を引き起こした瀋陽という地で、われわれにとって非常につらい記憶がたくさんあるところで、8月15日を描いた日本の漫画が瀋陽の皆さんに見ていただくことは嬉しいことです。この漫画展が日本と中国とお互い理解し合うことに役立つよう祈っております」とあいさつした。
「私は嬉しい」と井暁光館長
「今日は最高の日」
九一八歴史記念館の井暁光館長は開幕式終了後、次のように語った。
「私は嬉しい。今日は最高、最高のひとことに尽きます。80年前、日本が中国侵略を始めた当地で、歴史の重みのある場所で、日本の八一五漫画展が開かれたのです。日本の漫画は水準が高い。100以上の作品が敗戦の記憶を描き、深刻に戦争への反省をこめ、平和を訴えているのに感動しました。漫画は芸術の中でも生活と密接しています。中国人は漫画が好きです。大勢の人たちが来館して日本の反戦漫画を見ることを期待しています」
美術館のような中で
平和を描く日本の漫画家たちに
人気が集中(「瀋陽晩報」から)
8月15日は、日本の敗戦日。中国は戦勝日。立場も状況も違うが、ともに戦争の停戦日である。
漫画展の展示場は、照明をひかえ目に美術館のように格調高い。深く海の底のように静寂に包まれていた。その中で日本の漫画は120余点。8月15日のあの日を描いたやなせたかし、水木しげる、赤塚不二夫たちが反戦を静かに訴える。
2人連れの青年に聞いた。「いやー、日本の漫画はたいしたものだ。戦争の記憶をこのように描き表すとはー」と率直な感想だ。
ロビーでは、大勢の観客が見守るなかで、日本の漫画家たちが博物館のために大きな紙に漫画を寄せ描きをした。サインもいっぱいした。
引き揚げ漫画を見せた
日本の漫画を見る人たち
中国で最初に日本の八一五漫画展を開いた南京虐殺記念館・朱成山館長と再会した。朱館長は、日本の八一五漫画展は、このあと長春、ハルビンで開いて東北3省を来年前半に終えたあと、重慶、武漢、西安など全国主要都市で展開したいと壮大な構想をもらした。
本協会の「中国からの引き揚げ漫画展」のリーフレットを渡した。小一時間ほどかけて中国からの引き揚げ漫画について画集の絵を広げて説明した。ゆっくり一点ずつ熱心に見た。八一五漫画以前に森田拳次、ちばてつやたちが引き揚げ漫画というのを描いていたことを知って「これはすごい漫画です。引き揚げという歴史的事実を記録した漫画として残るものです」といって筆者の手を握った。
朱館長は、交流のある日中友好協会という民間の友好団体が、日本で全国的に中国からの引き揚げ漫画展を行なっていることに感心していた。
八一五漫画に続いて、引き揚げ漫画も中国で展示したいと強く思った。