日中友好新聞
2011年5月5日号1面
漫画力は復活力!
被災した人びとに。親しい人を失った人びとに。応援する人びとに。
石子順
3・11。午後2時46分。東日本大震災―。いまできること―中国からの引き揚げ漫画家たちの呼びかけで漫画家たちが素早く行動した。
被災者の皆さんを元気づけ励まし、自分たちも頑張ろうという思いを込めて何枚も漫画を描いた。東京・大手町「パソナ」本社ウィンドウで「地震被災者を元気づける漫画展」を開いた。
その何点かを漫画家の協力で、これから開催されていく「中国からの引き揚げ〜少年たちの記憶漫画展」でも展示することになった。漫画家の思いをより広く広めるためだけでなく、日中友好協会として地震被災者の皆さんへの応援という意味も込めて―。
ここに三点を緊急紹介する。
漫画は応援する
敗戦から立ち上がった力をいま描く
(c)ちばてつや
海老名香葉子さんが先日、「東日本の地震・津波の跡は、東京大空襲の後の東京みたいに見えてつらかった…」といっていた。
ちばてつやもテレビの映像で見た今回の大地震・津波の惨状と敗戦直後に中国から引き揚げてきた時に見た日本の姿とがだぶって見えた。そして一気にここにあげた漫画を描いた。
引き揚げた1946年の日本の惨状は敗戦によるもの。あれと同じようだが、あの時はどこからも応援がなかった。でも、いまは違う!という心強さを感謝し、本人を描き、鉄平を出して自分たちもガンバルぞ〜という応援漫画だ。
チャップリンも寅さんも赤塚不二夫も応援するだろう (c)森田拳二
漫画は笑いの使者
森田拳次は、このように代表作「丸出だめ夫」のだめ夫などの仲間たちと、東北に、闘う北とをだぶらせて東北よ負けるな!と叫んだ。ゲタをはいたロボットなど見るだけでおかしい。ギャグ漫画のキャラクターは笑いを巻き起こすのだ。
山田洋次監督が寅さんシリーズ48作「男はつらいよ 寅次郎紅の花」を、阪神淡路大震災の直後、笑いと励ましをという被災者の人びとの要請で神戸で撮ったことを思い起こす。今度の大震災でも、被災地の人が、「笑ってみたい。とにかく笑ってみたい。でもどうにも笑えない」(『AERA』緊急増刊号)といった。つらいことだ。でも漫画は笑いの使者になる。笑いは生きる力になる。
漫画は結束させる
コケシは苦難を克服する象徴−男に再生の意志がみなぎる (c)クミタ・リョウ
そして再生だ。政治漫画のベテラン、クミタ・リュウは「東北再生」という希望を呼びかけた。津波によって流された家の廃材を使ってコケシを彫る。逆境に抗していく姿だ。
コケシの頭がともし火のように輝いている。東北の象徴コケシに力強く復興の願いを、地震・津波に耐えぬいて立ち上がっていく意志を彫りこんだ。
漫画は、率直明快に励まして元気づける。ユーモアと笑いでへこたれた気分に活気をもたらす。比喩やシンボル化することで力を束ねて生き抜く決意を呼びさます。漫画力は復活力につながる。被災者の人びとに、親しい人を失った人びとに、応援する人びとに励ましを与えてくれる。いまこそ漫画を回りに広げていただきたいのです。