日中友好新聞
2011年3月5日号1面
人びとの暮らしや風景 迫力ある作品の数々
東京で「現代中国の美術」展
都市、出稼ぎ労働者、若者など、まさに中国の今を描いた美術展「現代中国の美術」が東京・日中友好会館で開催されています。(1月22日から3月13日まで)
09年に開催された第11回中国全国美術展の受賞作品の中から85点を展示。「中国全国美術展」とは5年に一度、全国の美術家を統括する中国美術家協会が主催している中国最大の公募展です。5万点以上の応募作品のうち、受賞は600点ほど。その中から厳選された作品が今回日本で初めて披露されたものです。同会館文化事業部の小林陽子さんに開催の目的や見どころを聞きました。
「村里」林森 (1958年生/油彩画)
現代美術の変貌を紹介
熱心に鑑賞する来場者
開催の目的は「現代の中国美術がどのように変貌してきたか、どのような方向に進んでいるかを紹介すると同時に、日中両国の美術交流を発展させることです」。
1988年に開館記念として「第6回全国美術展による現代中国美術秀作展」を実施したのが始まり。その後、「現代中国の美術」という名前に変更し、4度の展覧会を経て現在に至っています。
見どころは「やはり『超写実主義(スーパーリアリズム)』です。一つの一つの完成度が非常に高く、まるでカメラで撮影したかのようです。以前は中国画と油絵が中心でしたが、水彩画、版画、漆画の作品が増えました」と小林さん。
以前と比べ変化している点は「時事をそのまま描いた作品が目立っていたのに対し、10年前の展覧会から人びとの生活に寄り添った作品、日常生活の一場面を描いた作品が多くなりました」。
増えた「女性像」の描写
来場者に人気の作品は日常生活を描いた「我らが街角」。中国東北地方の街角で、人びとが楽しそうに大道芸人を見ている。明るく素朴な、普段のなにげない表情が1人1人細やかに描写されています。
発展とともに、地方で失われつつある伝統行事。「村里」はそんな伝統行事の一つ、村祭りの風景を横7メートル縦80センチの画面いっぱいに描写し、場内での存在感はダントツ。スケールの大きさも中国美術の魅力です。
京劇姿のあやつり人形を動かす若い女性を描いた作品が「中国の記憶」。ぎこちない手つきの女性たちによって京劇人形が小さく見えます。若者と伝統文化を対比的に表現した作品です。
「農民や少数民族の女性を扱った作品から現代の女性像、都市に住む女性像を扱った作品が増えたことも変化の一つ」とのこと。
「日中共通の題材」に共感も
1日60人ほど来場、総数およそ5000人を見込んでいます。昨年、奈良・福岡を巡回、今年4月には初めて富山で展示されます。
来場者からは「実際に中国へ行ってみたくなった」「写実の作品が多いので、親しみやすい。農村風景がどこか懐かしい」「若者や都市の様子といった題材から日中共通の姿が浮かび上がる」といった声が寄せられています。
小林さんは、日中文化交流について「初めて観にいらっしゃる方も多いです。互いの文化を知ることは、友好交流の基盤になります」「輸送や気候の変化にともなう作品の管理は大変ですが、来場者の感想を聞いて、改めて文化交流の大切さを感じます」と語っていました。(平澤)
☆開催について☆
▽とき=2011年1月22日(土)〜3月13日(日)午前10時から午後5時まで(入館は午後4時30分まで)
▽ところ=日中友好会館美術館(JR線・東京メトロ有楽町線、南北線、東西線・都営地下鉄大江戸線「飯田橋」駅 下車7分)
▽料金=大人400円、学生200円、小学生以下無料
▽問い合わせ=03-3815-5085
▽巡回=富山県立近代美術館で4月16日(土)から6月12日(日)まで