日中友好新聞
2010年11月5日号1面
中国人迎え京都観光の発展を
京都府連のシンポに110人
日中友好協会京都府連は9月2日、京都市内で「中国人観光ビザ発給緩和を迎え京都の観光業の発展を考える」シンポジウムを開催。110人の参加者が熱心にパネラー6氏の報告に耳を傾け、活発な討論を展開しました。
(左から)
中野重治氏、碇山俊光氏、城戸俊郎氏、松野豊氏、吉村澄代氏、人見昌宏氏
反響呼び申し込みが殺到
大きな反響を呼んだシンポジウム
このシンポジウムは、日中友好経済懇話会の共催、また、京都商工会議所、京都府中小企業団体中央会、西陣織工業組合、京都市観光協会、関西伝統工芸品ボランティアガイド協会の後援を得て行われました。
昨年から引き続くビザ発給緩和により、中国人観光客が増加している状況がメディアで報じられるなか、このシンポの開催は大きな反響を呼び、事前予約で70数人、その後も続々と申し込みがあり、会場の許容量の関係から、50人以上の人びとを断らねばならない盛況となりました。
日中友好を実践する場に
コーディネーターは
大西広・京都府連副会長
最初にあいさつに立った宇野木洋京都府連会長(立命館大学教授)は、中国人観光客を京都に迎えることは、一般の人びとによる国際交流が行われることで、まさに日中友好が実践される場であり、それが京都の活性化につながるという、このシンポ開催の主旨を述べました。
コーディネーターの大西広府連副会長(京都大学教授)の司会の下、6人のパネラーが報告しました。
北京の清華大学の野村総研中国研究センター理事・副センター長の松野豊氏から、中国人が対日旅行に求めるものについて紹介があり、中国人の文化や生活習慣の違いを日本人は理解する必要があることが述べられました。
JTB西日本の人見昌宏氏からは、中国人マーケットの現状について旅行業界の視点からの分析がなされました。
地元京都の業界から、料亭「南禅寺順正」清水店の城戸俊郎店長による京都のおもてなしについて、これまで積み重ねられてきた同店の経験が話され、西陣織工業組合専務理事の碇山俊光氏からは西陣のおもてなしとして、西陣織会館での過去10年以上にわたる取り組みが紹介されました。
関西伝統工芸品ボランティアガイド協会会長の中野重治氏からは、外国人観光客に京都の伝統工芸品の匠の技を伝える活動が紹介されるとともに、現在の伝統工芸継承の困難さの打開と今後のボランティアガイドを育てる必要性が訴えられました。
吉村澄代府連常任理事による、中国人観光客がここ数年急激に増え、その受け入れ戦略で一歩先んじている北海道の事例の報告もなされました。
伝統文化大切にした接待を
シンポジウムのポスター
質疑・討論では、京都のおもてなしの特色として、伝統文化を大事にしたおもてなしとは何かを考えねばならないこと、また、これから個人客を対象としてゆくためには、京都独特のもの―京都ブランドともいうべきものを作るためにも伝統を大事することだと強調されました。
また、京都の伝統工芸は、中国で始まり日本で確立されたものが多く、しかも現在の中国ではそれらが失われてしまっていることからも、中国人のなかにはそのような視点で京都に関心をもっている人も少なくないことも指摘されました。
京都は伝統の町であるとともに大学の町でもあり、いわば「伝統を科学する」という意味で、大学とのコラボレーションは欠かせない。また、大学に学びに来ている中国人留学生の役割は大きく、彼らに観光業への理解、協力を求めることは大きな意義があり、将来、帰国してから京都のことを中国で広めてくれることにつながるのではないか、という意見が出されました。
そのためにも、勉強している留学生を大事にしなければならず、また留学生を巻き込んだ大学生など若い人たちが京都の観光業を盛りたてていけるようになることが伝統を守るためにも必要だ、という意見もありました。
協会としては、中国人観光客を温かく迎えるためにも、京都の町の人たちが基本的な会話ができることを目的とする「おもてなし中国語講座」を今秋から新たに開講することを発表し、受講を呼びかけました。
シンポジウム終了後、参会者とパネラーとの懇親会がもたれ、質疑や議論がさらに深められました。(吉村澄代)