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日中友好新聞

2010年10月25日号1面
日中関係前進の道筋を熱心に討論
協会創立60周年記念講演とシンポ

 日本中国友好協会は10月9日午後、東京都内で「創立60周年記念講演&シンポジウム」を開催。悪天候のなか、250人余りの参加者が会場を埋め、3時間半もの全プログラムを終始熱心に聴講し、大きな拍手でこの催しの成功を盛り立てました。

 

協会発足の原点を大切に

 

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伊藤名誉会長が「日中関係と日中友好運動の60年と未来」と題して記念講演

 田中義教協会理事長が主催者を代表して開会あいさつと趣旨説明を行なった後、今回の行事参加のため来日した中日友好協会の袁敏道秘書長と張振興政治交流部員、中国大使館の文徳盛参事官を紹介、満場の歓迎を受けました。
 伊藤敬一名誉会長が「日中関係と日中友好運動の60年と未来」と題して記念講演。戦後史のなかでの日中友好運動を振り返り、1950年10月1日に誕生した日中友好協会が結成宣言の綱領第一項で「日本国民の誤った中国観を深く反省し、これが是正に努力する」と指摘していた原点に立ち返って、今後、日中両国民間で多面的な交流を発展させ、人民の力でアジアの平和の潮流をつくる展望を切り開こう、と訴えました。

 

学界の第一人者6人がパネリストに

 

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(左から)袁敏道秘書長、文徳盛参事官、
張振興政治交流部員

 シンポジウムは「日中関係の未来を展望する」がメーンテーマ。姫田光義さん(中央大学名誉教授)と加藤三由紀さん(和光大学教授)の総合司会の下、学界の第一線を代表する著名な学者6人がパネリストとして登場しました。
 第1部「歴史の自省から新たな日中関係を模索する」(コーディネーター=広島大学教授 水羽信男さん)、第2部「現状を分析し未来を展望する」(同=立命館大学教授 宇野木洋さん)に分かれて各氏が15分ずつ問題提起し、相互討論を経て、最後にまとめて質問に答えるという形式で進行。
 会場には、短時間ながら的確にポイントを突いた6氏それぞれの発言に耳を傾ける真剣な空気がみなぎりました。

 

歴史の自省から新たな日中関係へ(第1部)

 

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 第1部の発言者

 第1部では、まず石島紀之さん(フェリス女学院大学名誉教授)が「日中戦争の研究から」と題して、07年の南京事件70周年国際シンポ、日中戦争の国際共同研究などでの体験を披露し、相手側を一面的に判断する日中双方の「ナショナル・ヒストリー」を克服しつつ学問的探求を深め、それにもとづく相互理解を増進することの大切さを強調。市民レベルで対話を積み重ねながら、歴史認識を変え、政治を変えていく必要があると述べました。
 山田朗さん(明治大学教授)は「日本近代史研究から」がテーマ。近代日本が行なった戦争の戦場のほとんどすべてが中国だった歴史を振り返りつつ、日中戦争の「記憶」が語り継がれない構造を検証。それは戦争体験者が家族のなかでも「語るに語れない」事情や外では話せない「口止め」の要因があったからだと解明。日中戦争を生活上の身近な問題として若い世代に継承していく必要性を強調しました。
 劉傑さん(早稲田大学教授)のテーマは「日中歴史認識問題の研究から」。日中政府間の取り決めで行なわれた歴史認識共同研究で、最大の争点は「認識の共通・共有は可能か」だったが、「可能だ」(中国側)に対し、「違いの確認が大切」(日本側)という立場のずれが明らかになった、と指摘。
 国内的要素と国家間の要素が整理されないまま、歴史認識が語られている現状があり、政府、民間いずれも、さまざまな形で歴史認識の共同研究を深めていくことが必要だと述べました。

 

現状を分析し未来を展望(第2部)

 

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第2部の発言者

 第2部では、最初に大西広さん(京都大学教授)が「中国経済の現状から」のテーマで登場。中国経済の新しい問題点として、労働問題では賃金格差が「あるほうがよい」から「ないほうがよい」への転換点にあり、農民問題では、土地の「私有財産化」が進行し、民族問題では、経済開発のなかでこそ対立が生じている、と指摘。政府主導の市場経済化を進める中国式統治モデルは、資本主義の限界露呈の下で、われわれにとっても参考になる、と述べました。
 羽場久美子さん(青山学院大学教授)は「EUの現状から東アジア共同体を展望する」と題して発言。東アジア共同体実現のためには、そのカギとなる「日中和解」が急務だが、その点で、「究極の敵」だった独仏の和解を中心とするヨーロッパの統合を教訓とすべきである、と強調。アジアにはすでに10を超える地域協力機構ができており、経済を中心にできるところから統合体へと発展させるべきだと指摘しました。
 毛里和子さん(早稲田大学名誉教授)は「日中関係の現状から未来を展望する」の主題で発言。中国外交の特質として、問題別や相手ごとにあらゆる主義・理論をプラグマティックに活用し、「外交はパワー」という立場をとり、主権至上主義にこだわり、外交手段としての軍事行動がありうること、などを列挙。今後の日中関係は、あらゆる分野で「理性化、制度化、利益化」のルールを確立する必要がある、と提起しました。
 発言終了後の相互討論や、会場からの質問への回答では、天安門事件(1989年)の評価、劉暁波氏へのノーベル平和賞授賞、中国の民主主義のあり方などをめぐってパネリスト間で意見の相違もみられ、中国の現状と今後の展望を多角的に判断するうえで有意義なシンポとなりました。
 会場からも「たいへん良かった」という多くの感想が聞かれました。

 

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