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日中友好新聞

2010年9月15日号1面
涙さそう「残留孤児と母の対面」
前進座が「夢千代日記」を公演

 劇団前進座が、「夢千代日記」を今秋公演する。「夢千代日記」(主演=吉永小百合)は、1980年代にNHKテレビ「人間模様」で、「夢千代日記」「続夢千代日記」「新夢千代日記」の3部作として放映された。その3作目では、「中国残留孤児」が、実母を探して兵庫県美方郡温泉町(現・新温泉町)の置屋「はる家」を訪ねる場面がある。公園では、その一場面もとり上げる。

写真

主役の夢千代は今村文美さんが演じる

(写真提供:劇団前進座)

「夢千代日記」あらすじ
 主人公の夢千代(永井左千子)は、母親の胎内にいたとき、広島で被爆。白血病を発病しており、余命2年と宣告されている。物語は、その夢千代を取り巻く人びとの生きざまを、山陰の湯の里温泉の置屋「はる家」と、その冬景色を背景に物悲しく描く。ストーリーの展開は、夢千代が毎日綴っている日記が軸になっており、随所に、夢千代が日記の一部を読むナレーションが盛り込まれている。また湯の里温泉を訪れる謎の人物がシリーズごとに登場し、次第にその過去が解き明かされていくというミステリー的な魅力もある。
 三部とも物語の冒頭は、夢千代が原爆症の治療に神戸の病院に行き、その帰りに山陰本線の列車が余部(あまるべ)鉄橋にさしかかるころの車内から始まる。
 今回の前進座の舞台では、夢千代を今村文美、菊奴を西川かずこ、金魚を浜名実貴、記憶喪失の男を高橋佑一郎が演じる。

 テレビでは、母親スミを夏川静枝、残留孤児・王永春をせんだみつおが演じた。中高年世代は、その感動をいまも覚えている人が多いだろう。
 台本・演出の志村智雄さん、母親役のいまむらいづみさん、残留孤児役の柳生啓介さんにその思いを話してもらった。

 

節目ごとに「戦争と平和」をテーマに

 

 志村さん(※@)は現役の役者、前進座では初めての台本・演出である。
 上演について「今年は、被爆・終戦65年の重要な節目の年。前進座は、これまでも小林多喜二の『母』、『銃口』(ともに三浦綾子原作)など大切な節目の年に“戦争と平和”を考えるテーマを選んできました。この芝居も重いテーマです。この芝居では、被爆という被害体験と、中国侵略という加害体験が同時に出てきます。しかし、庶民にとってはどちら“戦争の犠牲者”です。対立的に見えるこのテーマを正しく理解してもらうよう工夫したい」と切り出す。
 「孤児の場面は、肉親探しが始まったばかりの1982年を設定。スミさんが、実母だったかどうかは作品では不明ですが、芝居では、孤児がわざわざ山陰の山奥の温泉を訪ねる心境、実子かどうか分からなくても、幼い子どもを見捨ててきた母親の罪の意識をどう感動的に伝えるか。またなぜ日本人が満州にいたのか"、その背景が分かるように描きたい。座切ってのベテランいづみさん、中堅の柳生さんが見事に演じてくれるでしょう」

 

※@ 志村智雄(しむら・のりお)
 前進座座友。歌舞伎から現代劇まで、芯をしっかり支える名脇役。主な舞台は「唐茄子屋」(伯父六兵衛)、「銃口」(北森政太郎)など。外部では、劇団俳小で「どさ回りのハムレット」の演出を手掛け、1998年池袋演劇祭賞豊島区長賞を受賞。

 

遠のく「戦争体験」きちんと伝えたい

 

写真2
柳生啓介さんと、いまむらいづみさん


 いまむらいづみさん(※A)は、「私は、かつて映画『白い町ヒロシマ』(新藤兼人脚本・山田典吾監督・乙羽信子共演)に母親役で出演、近年では『今日われ生きてあり』など戦争に関わる作品に出ました。いま、その戦争体験が年々遠のいていくなかで、いつも“体験継承はこれが最後”という気持ちで演じています。スミさんは、はる家の賄いから帳簿付けまで、すべて一手に引き受ける芯の強いしっかりした女性です。悲惨で過酷な戦争体験をもつこの女性を内面からどう演じるか」。その表情にはベテラン役者の気概がのぞく。

 

残留孤児になりきって演じたい

 

 柳生さん(※B)は「私は戦後世代ですが、鹿児島の知覧での特攻兵の最後を描いた『今日われ生きてあり』で千田伍長役をやりました。
 終演後楽屋に、実在する千田伍長の多くの同期の戦友が訪ねてきて、「千田!会えてよかった」と私の肩をたたき本気で喜んでくれました。タイムスリップしてるんですね」。
 この体験から「役者というのはなんて深くて、重い、大切な仕事なんだろう」と芝居の凄さに感動しました。『大地の子』の上川隆也さんの演技にも感銘を受けました。孤児の役は重いですが、王さんの“母に会いに来た思い”をどう演じるか。緊張しています」と話す。

 

※A いまむらいづみ
  父は前進座の名脇役藤川八蔵。1984年「エリザベス・サンダースホーム物語」の沢田美喜役で第9回菊田一夫演劇賞を受ける。主な舞台は、「出雲の阿国」(阿国)、「母」(小林せき)、「今日われ生きてあり」(鳥浜うめ)、「さんしょう太夫」(母玉木)など多数。

※B 柳生啓介(やぎゅう・けいすけ)
  前進座青少年公演では、主役作品をはじめ、数多くの作品でなくてはならない存在。主な舞台は、「或る『小倉日記』伝」(田上耕作)、「今日われ生きてあり」(千田伍長)、「銃口」(近堂弘上等兵)、「くず〜い屑屋でござい」(屑屋さん)など多数。

 

華やかな舞台にも目を向けて

 

写真3
志村智雄さん

 志村さんは「深刻なテーマですが、人間の命の大切さ、親子の愛情の深さなどを中心にした人間模様が浮き出る娯楽的作品にしたいと考えています」。そして「すべての場面で、湯の里温泉の華やかな芸者が一丸になって芝居を盛り上げます。その明るさ、楽しさにもご期待を…」と結んだ。



 

本紙読者は割引料金で
☆2010年10月15日(金)〜24日(日) 前進座劇場
 (全席指定)一般7000円 ユースチケット
 (25歳以下)3000円
☆2010年12月7日(火)〜9日(日) 浅草公会堂
 (全席指定)一等席7000円 二等席4500円 三等席2500円
両劇場とも、「日中友好新聞を見て」と言うと割引になります。
 (※大阪・名古屋など全国公演も予定)
■問い合わせ先:劇団前進座 TEL:0422-49-2811 FAX:0422-45-0312

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