日中友好新聞
2010年5月5日号1面
引き揚げ、「生命」の漫画展
協会創立60周年記念巡回展決まる
日本中国友好協会創立60周年に当たり、記念企画の一つとして「八月十五日の会」の協力による「中国からの引き揚げ〜少年たちの記憶」漫画展を全国で巡回開催することとなった。
12人の漫画家の作品が
これは戦中、戦後を旧満州―中国東北部などに在住し、1946年に帰国して人気漫画家になった上田トシコ、赤塚不二夫、森田拳次、ちばてつや、北見けんいち、高井研一郎、古谷三敏、横山孝雄、山内ジョージ、バロン吉元、山口太一、林静一がその引き揚げ行を描いた漫画、55点近くを巡回展示。全国の人びとに贈るものである。
戦中と戦後のきびしさ
いわゆる満州≠ナの生活がある。目に映った自然と街並みと中国人とのかかわり、食べたもののおいしさ。
戦争がきびしくなって父が子に手榴弾のあつかい方を教えている。カラスが空を埋めたおののきがある。赤い夕陽に広野を長い列車が走る。
敗戦。家を追われた。外国の兵隊に銃をつきつけられた。ものを売って暮らした。引き揚げが始まった。母は絶対手を離すなと子どもにいった。走る無蓋車から小便をした。引き揚げ船はでっかい。日本についた時の驚き、緑が一杯だったが小さかった―。
漫画にきざまれた子どもの記憶から、日本が中国で何をしたのかと見つめさせる。自分たちのつらい体験を二度と子どもたちにさせたくないという願いがあふれている。日本に帰ることができなかった人びとの魂を背負っている。
これらの漫画には戦争、引き揚げから生き抜いた生きる喜びと重みが脈打っている。自分たちを生かしてくれた中国大地への感謝がこめられている。
漫画の魅力、引き揚げ体験を共有
漫画は、一コマ、四コマ、ストーリーものといろいろある。引き揚げ漫画は一コマの色彩漫画だ。漫画は笑いと風刺と記録の芸術であり、見ればすぐわかる視覚文化である。
漫画はユーモアを忘れないから深刻な中にほっとさせる。大人も子どもも引きつけ、共感させる。そこから120万人の帰国、20数万人の死と残留孤児を生んだ引き揚げという歴史事実を共有、対話を生み出すことだろう。
21世紀も10年目になり、戦後65年を迎えるなかで、過去を知り、現実を見つめ、未来を考えさせる生ける魂の展覧会だ。反戦、平和、「日中不再戦」を理念として運動しつづけてきた日中友好協会にまことにふさわしい「生命」の漫画展である。(石)
ぜひ多くの方々に
森田拳次さん
引き揚げ漫画を描こうと呼びかけた「八月十五日の会」代表森田拳次さんは「何とかして少しでも当時の記録を残したい。そんな思いを持つ引き揚げ経験者の漫画家たちが集まって、幼い頃の断片的な記憶を紡ぎつつ、はるかなる大陸への郷愁、そして逃避行の思い出などを描いた。戦争体験はもとより、戦争を知らない世代の方々にもぜひご覧いただきたいものである」と訴えている。
漫画展の開催について
「協会創立60周年記念事業委員会」は、全国統一企画として、漫画展「中国からの引き揚げ・少年たちの記憶」の全国巡回を企画、先の第3回常任理事会で決定しました。
開催期間は、2010年5月から2011年4月末まで。すべての都道府県、多くの支部での開催を呼びかけています。
問い合わせ、「貸し出し」の詳細は、日本中国友好協会本部まで(TEL:03-3234-4700 FAX:03-3234-7403)