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日中友好新聞

2010年3月5日号1面
衰退下の超大国、「登り龍」への牽制
米国が意図的に対中摩擦
ジャーナリスト 伊藤力司

 昨年11月のオバマ大統領訪中で友好を確認しあった米中両国の関係に、最近きしみが目立ちます。その問題点、今後の展望などについて、伊藤力司さん(ジャーナリスト)に解説をお願いしました。(編集部)

 

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オバマ大統領が訪中した昨年11月17日の米中首脳会談の成功を大きく報道した人民日報の第1面

 昨年11月のオバマ大統領の訪中で高まった「米中蜜月」から僅か3カ月、このところ米中関係には亀裂が走っている。そのわけは米国が1月後半から意図的に対中摩擦を引き起こしているからだ。

 

グーグル、台湾、ダライ・ラマ

 

 米国のネット検索大手グーグルが中国側の検閲やサイバー攻撃をやめなければ中国から事業撤退すると警告したのを受けて、クリントン国務長官は1月21日「サイバー攻撃にかかわる国家や個人は重大な報いを受け、国際的な非難に直面するだろう」と厳しい対中非難声明を発表した。
 さらに1月29日、米国は長らく延期していた台湾への武器売却(64億ドル)を発表、憤慨した中国は直ちに米中軍事交流の凍結を宣言した。
 続いて2月18日、オバマ大統領は訪米中のチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世と会談した。中国が「分裂主義者」ダライ・ラマへの厚遇を最も嫌っていることを承知の上だった。

 

オバマ訪中で「戦略的協調」確認

 

 昨年11月訪中したオバマ大統領は胡錦濤国家主席、温家宝首相らと友好的に会談、地球的規模の課題に取り組む「米中戦略的協調」を打ち出した。この会談で大統領は、これまで米側が常に問題としてきた人権、宗教、台湾、民主化などの対立点には言及しなかった。これより先、訪中を控えたオバマ氏はダライ・ラマとの会談を控えた。過去半世紀にわたり歴代米大統領とダライ・ラマの会談は慣例化していたのに。

 

米国債保有減らした中国

 

 このように中国に気を遣っていたオバマ政権が、年が代わってからわざと対中摩擦を起こしているのはなぜか。
 リーマン・ショック後世界不況に苦しむ先進国をしり目に中国は昨年も8%超の経済成長を続け、ドイツを抜いて世界一の輸出大国になり、今年中に日本を抜いて世界第二の経済大国になる。2兆ドル超と世界一の外貨準備高を持つ中国は、財政赤字に苦しむ米国国債の大口保有国である。その中国をなぜ怒らせるのか。
 もし中国が本気で米国債を売ったらドルは大暴落、世界経済は破滅するだろう。もちろんドル暴落は中国のドル資産を壊滅させるから、中国もそんな自殺行為はしない。
 しかし、昨年11月末、中国は世界一の米国債保有国(7576億ドル)だったが、12月末には日本(7688億ドル)に首位を譲り、保有高7554億ドルとなった。
 つまり僅かながら米国債を売ったのだ。一方、台湾への武器売却への報復として軍事交流中止を宣言した中国だが、米空母ニミッツの香港入港(2月14日)を認めている。中国の対米牽制はなかなか芸が細かい。

 

どうなる胡主席の訪米

 

 「眠れる龍」と言われた中国が目覚め、21世紀は米中の覇権争いの世紀になろうとしている。衰え始めた「唯一の超大国」と世紀後半には世界一の経済大国になると言われる「登り龍」との対決だ。
 これまで世界経済の管理はG7やG8でなくて米中のG2だと中国をおだててきた米国だが、中国に国債を買ってもらって未曾有の財政赤字をしのいでいる現状を考えれば、もうおだてている余裕などなくなり牽制作戦に転じたと解釈できる。
 オバマ政権の外交は当面、核開発疑惑の焦点になっているイランに対し国連決議による追加制裁を課すことを最優先している。それには国連安保理の常任理事国として拒否権を持つ中国の賛成を取り付けなければならない。
  しかし、石油資源国イランとの経済的結びつきを強めている中国は、対イラン追加制裁には否定的だ。また胡錦濤国家主席は4月、米国で開かれる核拡散防止サミット出席のため訪米する予定だが、オバマ政権に不快感を示すため訪米予定を取り消すかもしれない。そうなれば米中関係は危機モードに入る。

 

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