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日中友好新聞

2009年12月5日号1面
将来は日本社会で貴重な人材に
「在日中国人・外国人の子どもたちの現状」を考える−東京・新宿でシンポジウム

 在日外国人が全国で200万人、在日中国人が全国で65万人を超すなか、その子どもたちを取り巻く現状を知り、考えるシンポジウム(主催=協会東京・新宿支部、後援・新宿区・新宿区教育委員会)が10月17日東京・新宿区で開かれ、56人が参加。在日外国人との共生が求められる日本の未来のために、子どもたちに目を向けることの必要性を明らかにしました。(編集部)

 

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パネラーの発言に熱心に耳を傾ける参加者


 シンポジウムは、平山知子新宿支部長のあいさつに続き、東京学芸大学大学院研究者の李原翔さん(11月15日号「私と日本」)、東京都教職員組合新宿支部書記長の福原健二さん、「しんじゅく多文化共生プラザ」課長の八木原良貴さんの3人がパネラーとして報告と問題提起を行いました。

 

「政府としての対策」急げ

 

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李原翔さん

 李原翔さんはまず、在日中国人や外国人の子どもの現状について説明。
 在日外国人の子どもは全体で7万人。高校進学率は20%に届かず、中退率は50%にも。日本語ができない子どもが高校に進学できず、ほぼ毎年1万人ずつ低学歴で日本社会に放り出されているのが現状です。
 「中学校・高校へ行っていない子ども(不登校・不就学)を含めると、10万人を超えているのではないか。このまま対策をとらず放置すれば10年後、20年後はどうなるのか」と述べました。
 また、親が子どもを祖父母などに預けて来日し、5年〜10年も離れて暮らした結果、相互理解や、価値観、教育理念の共有が失われるケースや、入学時期の違いや学校制度の差異を親がほとんど理解しておらず、来日した子どもが学校に編入できず、居場所を失うケースが多いこと、子どもたちのなかに「早く日本語が上手になりたい、文盲になりたくない」など、切実な声があがっていることも紹介。
 「こうした子どもたちへの日本の教育政策は、『検討中』ばかり。彼らはお客さんでなくて、ずっと日本で生活していく永住者。きちんと教育機会をつくれば、日本社会にとっても貴重な人材になる。しかし、反対にそのまま放り出せば、将来日本社会の不安要素にもなりかねない」と指摘。
 学校の現場における教師らの努力や、民間ボランティアの努力を評価しつつも、「すぐにも政府の対策が必要」と強調しました。

 

「現場」ごとの対応に限界も

 

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福原健二さん

 福原健二さんは、小学校の教室で外国人の子どもを受け入れた経験や、区内の公立中学などで日中韓英4カ国語の学年便(だよ)りを出している例も紹介。
 外国人受け入れに努力している学校に、外国人の子どもがさらに集中するため、対応できる学校をもっと増やして欲しいこと、また30人以上のクラスが多い現状では外国人生徒への対応がどうしても不十分になるため、少人数学級の必要性も訴えました。
 八木原良貴さんは、新宿区で地域によっては在住外国人が30%から46%にもなるという現状のもとで、外国人相談窓口、日本語教室、子どもへの支援など、多岐にわたる「プラザ」の活動を紹介しました。
 07年度の実態調査では、在住外国人が最も困っていることは「物価が高い」で、2番目に「言語の問題」。現状では外国人の子どもたちへの対応は現場ごとに対応しているが、「国の方針を決めてもらうのがベストだ」と述べました。

 

「自分にできること考えたい」の声

 

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八木原良貴さん

 シンポジウムには在日中国人やボランティア活動をしている日本人、中国「残留孤児」2世なども参加。
外国人の子どもの勉強を見る支援活動を続けるNPO「みんなのおうち」の小林普子さんは、「親たちが仕事で忙しく、家に1人でとり残されたり、学校給食しか食べられない子どもも多い」という現状で、「彼らが高校に進学できるよう頑張っている」と述べました。
ほかの参加者からも、「現状を知り胸が痛む思いがした」「自分にできることについて考えたい」「幼稚園にはあるのに保育園には全く援助がない、どうにかしてほしい」などの感想・意見が出されました。(協会新宿支部・北中一永)

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