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日中友好新聞

2009年7月25日号1面
金融危機下の「社会保障」と「雇用」
中国国際交流協会の招待で
日本中国友好協会代表団が訪中
各界専門家と意見交換

写真
座談会のようす


 日本中国友好協会代表団が6月23日から27日まで、中国国際交流協会の招待で訪中。金融危機のもとでの社会保障、雇用保障をテーマにした「座談会」を北京で行い、終了後、大連で経済、環境、雇用などに関する視察を行いました。


 この「座談会」は、日中両国が直面する「世界金融危機」をテーマに学術交流を行うことを目的に、中国国際交流協会と日中友好協会の協議により実現したもの。
 代表団は長尾光之協会会長を団長とし、井手啓二(長崎大学名誉教授)、大西広(京都大学教授)、進藤榮一(筑波大学名誉教授)の専門家3氏、佐藤勝協会事務局次長の5人。
 23日北京入りした一行は、中国国際交流協会・朱達成副会長主催の宴会で歓迎を受け、翌24日、「座談会」に参加しました。

 

社会保障、雇用、教育の現状と課題

 

 「座談会」は、中国側専門家として、午前に中国社会科学院日本研究所経済研究室の張季風主任、全国総工会国際連絡部の彭勇副部長の2人が出席し、「金融危機のもとでの社会保障」のテーマで交流。
 午後は、中国就職促進会の張幼雲副会長、中華職業教育社の楊金土専門委員が出席し、「金融危機の下での就職保障」をテーマに報告や意見交換。
 最初に、彭勇氏が中国の社会保障制度の現状と、高齢者、失業者、農民工への対策など、直面している課題、社会保障制度構築における全国総工会の果たす役割について報告。
 続いて、張季風氏が、日中両国の経済が金融危機の影響を受けた原因は、東アジア地域に共通の、「外需主導」の経済のあり方だったと分析。
 日中経済の相互依存が進むなか、将来に向けて省エネ・環境保全分野の産業で両国が基金をつくり、協力していくことも提案しました。
 午後は、張幼雲女史が、青年、農民工、貧困者を対象に行なっている中国政府の雇用政策を紹介。内需拡大、雇用拡大、各種手当て、起業支援、技能養成などの施策を着実に行い、雇用を安定させるため、経済成長の維持が必要であると強調しました。
 続いて、楊金土氏が、中国の教育の現状から雇用問題を分析。技能労働者や新分野の職業で必要とされている人材を養成する教育、若者自ら起業する能力を養う教育の整備など、教育における構造的な課題を明らかにしました。

 

新しい「ものづくり」の時代へ

 

 大西広氏は、中国の社会保障を考えるうえで、高額所得者への累進課税の強化、農村部では、努力して豊かになるチャンスを生かした人の所得上昇が大きくなる制度の構築が必要なこと、また中国は2025年前後に高度成長が止まり「ゼロ成長」となる時代に対応した社会制度の転換が必要になるだろう、との予測を示しました。
 井手啓二氏は、日本の社会保障、雇用の現状と問題点を紹介しながら、中国の社会福利と就業保障の制度はなお形成過程にあり、とくに農村部は着手段階で、年金制度、医療制度、就業対策は内需拡大のうえでも急務であると指摘しました。
 進藤榮一氏は、アメリカ発の金融危機の教訓として、カネがカネを作り出す仕組みで収益を上げるよりも、質の高い、環境にやさしい製品をつくる新しい「ものづくり」への転換が求められていることを指摘。経済相互依存が、東アジアの地域統合を促していく流れのなか、「東アジア共同体」構築の展望を語りました。
 また、経済発展で獲得した「豊かさ」を背景に、中国でも急速に高齢化社会が進んでおり、新しい医療、社会福祉など、高齢化時代を支える産業、人材、教育が求められていることを強調しました。
 座談会は、活発な質疑、意見交換を通じて、「外需から内需へ」「環境産業」「教育の重要性」などの点で意見の一致をみて、大きな成果を収めました。

 

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